2代目モンスター SEL 6.9【後編】最大トルク56.0kg-m、エグゼクティブのドラッグレーサー|1978年式 メルセデス・ベンツ 450 SEL 6.9

リアのオーバーハングも長く、トランクルームは広大な容量を実現している。そして各ウインドーは大きく取られてお視界は良好だが、ガラスそのものが重くパワーウインドーのモーターへの負担は大きい

       
【欧州名車列伝|1978年式 メルセデス・ベンツ 450 SEL 6.9 Vol.2】
【前編】から続く

メルセデス・ベンツは最上級のショーファードリブンを実現する上級ブランドとして、世界にその名を知らしめている。しかしここで紹介するのはフルサイズの上級セダンだが、その中身はモンスター級の性能を有するスーパーセダンだ。メルセデス・ベンツの歴史のなかでも希少な存在で、1968年に登場した300 SEL 6.3と、その後継となる450 SEL 6.9は、特別なモデルとして語り継がれていくはずだ。


【画像14枚】全長は約5mと実に大きい。ホイールベースも286mmと長めの設定となっており、直進安定性は素晴らしい。Sクラスならではのサイズ感だ。

450 SEL 6.9は先代の300 SEL 6.3と同様、メルセデスの伝説として語られるプレステージセダン&リムジンの600から、専用のV型8気筒エンジンをコンバートする。しかも車名が示すように、600および6.3の6332ccから、6834ccに拡大。286psのパワーもさることながら、56.0kg-mの最大トルクは、当時では驚異的なスペックだった。その結果として得られた動力性能も、まさに驚異的なもの。当時の北米「ロード&トラック」誌が「エグゼクティブのドラッグレーサー」という称号を奉った300 SEL 6.3の0→100km/h加速6.5秒の俊足ぶりは車両重量が増えたため少しだけ劣るものの、最高速度は6.3を上まわる225km/hに到達していた。

そして「エンジンよりもシャシーが速くなければならない」という、メルセデスは長年の技術的フィロソフィーにしたがって、ソフトな乗り心地と操安性の両立を図るべく、シトロエン社から特許を受けてハイドロニューマティック式サスペンションシステムを採用。そのメカニズムの搭載により、450 SEL 6.9は自動車史上屈指の複雑なモデルとして知られる。当然ながら修理やメンテナンスについては、かなりのクセモノであることが想像された。


この個体は30年間も倉庫保存をしていたにもかかわらず、燃料系、水回り、油脂関係、ブレーキオーバーホール、ハイドロニューマチックはアキュムレーター交換と修理レベルの再生で事足りている。そしてエンジン内部は固着がなく、基本的な消耗パーツと油脂類の交換とクリーニングのレベルで復活。嫌なノイズなどもなく、改めて材質のクオリティーや設計思想の高さを実感したという。なお、ボディは塗り直した形跡があるが、しっかり純正カラーで対応しており、質感を維持している。



>>エンジンは600系(W100)に搭載されていた6.3リッターのV型8気筒SOHCエンジンの発展型。ボアが4㎜広げられて排気量は6834ccにアップしている。ブロックも強化され、補機類もほぼ新設計されているという。そして最大の違いは、燃料噴射装置にボッシュ製Kジェトロニックを採用したこと。



>>ラジエーターファンの脇に設定されている2本の筒は、ハイドロニューマチックのオイルポンプ。このモデルの最大の特徴といえる部分だ。

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Akio Hirano/平野 陽

RECOMMENDED

RELATED

RANKING