XJ、その2代目【2】もはや望むことのできなくなった低くて流麗なプロポーションと3.2リットルエンジンのジェントルな走り|ジャガー XJ6

XJ40時代に初採用され、21世紀初頭までジャガーの特徴となった4速ATの「Jゲート」。左側のゲートでマニュアルシフトを可能とする

X300型XJシリーズは、その美しさや英国製高級車の伝統を体現した豪華で派手なインテリアへの評価から、英本国や北米はもちろん、日本でも大ヒットを獲得する。しかしいつの時代もジャガーのメイン市場である北米からの要請もあって、デビューから4年後となる98年には、新設計のV型8気筒32バルブエンジンを搭載したX308シリーズへと移行することになった。

かつてのヒット作であることから、日本国内でもつい10年ほど前までは珍しくもなかったX300系XJ6だが、ここ数年は目にする機会もすっかり減少。しかし久方ぶりに目の当たりにしてみれば、その美しさを今いちど思い知らされることになるだろう。

現在の交通法規上、もはや望むことのできなくなった低くて流麗なプロポーション。初代XJの意匠を継承した丸形4灯ヘッドライトなどのジャガー伝統の美意識が、90年代にあっても普遍的な魅力をもたらしている。 一方インテリア、特にダッシュパネルはXJ40からほぼ踏襲されるが、個人的にはのちのX308よりも端正に映る。そしてジャガーらしい端正なフィールは、走りについても体現される。

同じAJ16型でも、4ℓ版がいかにもロングストロークを感じさせるトルク感を持つのに対し、こちらの3.2ℓ版は「回転で稼ぐ」タイプ。軽快に回ってくれるものの、いささかの線の細さは明らかだ。それでも、直列6気筒らしいシルキーなフィールで回るDOHCは実に心地よく、XJ40以来、近代ジャガーの定石となった「Jゲート」でセレクトするZF製4速ATとの組み合わせで、過不足のない走りをスムーズに演出するのだ。

 昨今はミニバンやSUVがファミリーカー代表となった感もある一方で、セダンにはかつてのクーペのようなパーソナルカーとしての要素を帯びてきたかに思われる。そんな現況にあって、この時代のジャガーがことさら魅力的に映る。ちなみに今回の取材車両は、今年秋からレンタカーとして運用されているとのこと。首都圏在住の読者の皆さんには、この味わいを体感してみることも一興とお勧めしておこう。

>> 【画像16枚】英国伝統の様式美が、再び世界のカーマニアたちの注目を浴びつつあった1990年代。 この時代に登場したジャガーの高級サルーン、X300系XJ6は、 クラシカルな内外装と、この時代における最新のテクノロジーの完全両立に成功していた。メーターナセル内にもウオールナットベニアのダッシュパネルが貼られる。XJ6ベーシック版のシートは、本革&合成レザーとウールツィードのコンビ。肌触りは非常に心地よいものである。直列6気筒DOHC24バルブのAJ16型ユニットは、3.2ℓ版でも225psのパワーを誇るが、サウンドや回転フィールは極めてジェントルで好ましい

【1】を読む

英国製高級車の伝統を色濃く感じさせるインテリアは、このクルマにとって最高の魅力の一つ。
>> 英国製高級車の伝統を色濃く感じさせるインテリアは、このクルマにとって最高の魅力の一つ。

【1】を読む

初出:ハチマルヒーロー vol.45 2018年 1月号 
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ジャガー XJ6(全2記事)

関連記事:ジャガー

TEXT : HIROMI TAKEDA/武田 公実 PHOTO : DAIJIRO KORI/郡 大二郎

RECOMMENDED

RELATED

RANKING