12気筒の鼓動がはっきりと感じられるレスポンスや吹け上がり。そのドラマティックなサウンド|1992年式 フェラーリ 512TR【5】

エンジンは、本体のブラッシュアップに加えて、燃料噴射システムの進化などで、テスタロッサ時代から約10%のパワーアップに成功していた。

ハチマル世代のシンボルともいうべき世界最高峰スーパースター、フェラーリ・テスタロッサを大幅にブラッシュアップした512TR。そのダイナミックにして美しいピニンファリーナ製ボディの下には、1990年代最新のテクノロジーとスピリットが込められていた。

【ハチマルユーロー 1992年式 フェラーリ 512TR vol.5】

新車デビュー以来、約四半世紀ぶりに乗ることになった512TRだが、その走りっぷりは当時の感動をそのまま体現するものであった。425psのパワーは、現代の常識では驚くほどのものではないかもしれないが、実際のところ街中や郊外のバイパスを走る程度のペースでは、600ps超級の現代フェラーリにも、なんら遜色は感じられない。

むしろ12気筒の鼓動がはっきり感じられるレスポンスや吹け上がり。ドラマティックなサウンドなどには、最新の跳ね馬を感覚的には凌いでいるかにさえ感じられる。

またテスタロッサから格段に進化したシャシーとボディについても、現代のスーパーカーに準ずるレベル。ノンパワーのステアリングと重めのクラッチと格闘しながらのドライブには、本物のスーパーカーならではの達成感と満足感がある。なにより、若き日の思い出を色褪せさせないだけの感動があることに、安堵したのである。
【画像21枚】黒い盤面に赤い照明が光るヴェリア社製メーターも、この時代のフェラーリの象徴


>> コノリーレザー張りのシートはテスタロッサ用よりもサポートに優れる。




藤井元輔さん(東京都)

本誌の表紙車撮影を担当していることでもおなじみの藤井カメラマン。自動車業界では最若手に位置する30代ながら現在数多くのクルマ雑誌で活躍する、現代の代表的クルマ系カメラマンだ。フェラーリ公認カメラマンで、撮影現場に512TRで乗り付けることもしばしば。株式会社サルーテ代表。


SPECIFICATIONS/主要諸元
1992年式 フェラーリ 512TR


●年式 1992年式
●全長×全幅×全高(mm) 4480×1975×1135
●ホイールベース(mm) 2550
●トレッド(mm) 1530/1645(前/後)
●車両重量(kg) 1595
●エンジン型式 F113D型
●エンジン種類 水冷V型12気筒DOHC 4バルブ
●総排気量(cc) 4943
●内径×行程(mm) 82.0×78.0
●最高出力(ps/rpm) 428/6750
●最大トルク(kg-m/rpm) 50.1/5500
●サスペンション 前後ともダブルウィッシュボーン+コイル/
スタビライザー
●ブレーキ 前後ともベンチレーテッドディスク
●タイヤサイズ 前235/45ZR18/後295/35ZR18


【4】から続く


初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1992年式 フェラーリ 512TR(全5記事)

関連記事:ハチマルユーロー

text: Hiromi Takeda/武田 公実 photo: MOTOSUKE FUJII/藤井元輔(サルーテ)

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