「スカイラインは、光り輝く存在でなくてはいけない」R32スカイライン開発主管・伊藤修令スペシャルインタビュー

R32スカイラインの開発主管を務めた伊藤修令さんと、今も乗り続けている愛車のR32スカイラインGT-R

       

現在でこそ、ヒストリックカーとして独自の価値を持つ7thスカイラインだが、新車登場時には首をかしげるファンもいた。とくにスカイラインファンからは「裏切り」として背を向けられることも少なくなかった。

「快適で居住性に優れたモデルは、市販車として見れば間違いではない。しかし、これはローレルにとっての正答で、スカイラインにとっての解答ではない。スカイラインを支持し、長らく愛し続けて下さったファンの方々は、スカイラインに後席居住性は求めていない。むしろ、ぎゅっと押し固められた性能の凝縮感、これを喜んで下さる方々ばかりでした」

「早く元の姿に戻して……」スカイラインの悲痛な叫びが、私には確かに聞こえた

ある意味、伊藤さんにはツキがあった、と見ることもできた。車両単体としての出来の良しあしではなく、スカイラインのイメージ像から離れてしまった7thの次期モデルを任されたからだ。市場では、お世辞にも好評だったとは言い難い7thだけに、思い切った手を打てる環境、条件が整っていた。開き直って言えば、失うものはない状態だった。

「7thを見ていますでしょ。そうすると、『ボクはこんなんじゃない』、『早く元の姿に戻してほしい』、そう訴えかける声が聞こえてくるんですよ。それこそ悲痛な叫びですよ」

富士精密入社時から、友人のようにスカイラインを見守り続けてきた伊藤さんにとって、本質を見失ったスカイラインの姿は、とても見るに堪えない状態だっただろう。「オレが元に戻してやる、もう少し待ってろ」、そんな会話があったのかもしれない。

「スカイラインを成立させる要素はいろいろあると思いますが、突き詰めれば、その本質は走りでしょう。そして、その本質に見合ったスタイル。直6だ、DOHCだと細かなメカニズムを挙げれば、それこそ数限りなくありますが、やはりスカイラインの基本は走りの性能。1800㏄の標準モデルから、グループAレースを勝ちに行くGT‐Rまで、ドライバーの思いどおりに気持ち良く走るクルマでなければダメだと。とにかく、全体論から各論まで、この点にだけ留意しました」

>>R30、R31を経てついに登場した、R32スカイラインGT-R。


text: AKIHIKO OUCHI/大内明彦 photo: RYOTA SATO/佐藤亮太

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