ボルボ自らがレストアしたクーペ【後編】全パートをオリジナルに忠実に再生することをテーマに|1971年式 ボルボ P1800E

リアから続くメッキモールと、ドアハンドルが一体化したデザインが特徴的。国産車ではあまり見られない三角窓とドアミラーの組み合わせられている

       
【前編】から続く

2020年、取材当時のボルボ・カー・ジャパン社長の愛車、P1800Eをレストアしたボルボ・カー・ジャパン。徹底したオリジナルへのこだわりぶりで、新車のように美しい姿を実現している。

【欧州名車列伝|1971年式 ボルボ P1800E Vol.2】

レストア作業をするにあたって、全パートをオリジナルに忠実に再生することをテーマとした。だが、パーツ供給の事情を考慮して苦労があったようだ。
まず、エンジンやトランスミッションをはじめとするメカニカルパートでは、新しい部品はほとんど使わずにオリジナルパーツを再利用。分解・洗浄したうえで再組み立てすることにした。

一方、ボディワークとペイントは、ボルボ・カー・ジャパン指定の認定板金工場が担当。ボルボ・カー・ジャパンの名に恥じることのないオリジナリティーを徹底追求するために、このモデルの新車当時のボディカラーにこだわり、前オーナー時代の濃紺から純正色である「サファリイエロー」に色替え。ようやく現在の設定に近い状況となり、オリジナル状態に戻すことにこぎ着けたという。

【画像16枚】グリルまわりの美しい曲面構成もP1800のデザインの大きな特徴。やや湾曲したタイトなデザインのグリルも特徴的だ


2リッターのターンフロー式直列4気筒OHVのB20E型エンジンは、電子制御燃料噴射装置(EGI)の採用でキャブレタータイプのB20型に比べて出力もトルクも向上している。EGIはボッシュが開発したDジェトロニックを採用する。67年に登場した当時としては、最新のコンピューター制御による燃料噴射装置だった。



ウッドパネルが印象的なインパネまわりで、サイドブレーキは運転席の左側に位置している。タイトな設定のデザインで、ウッド調とブラック樹脂をしっかり調和させている。


左のタコメーターと右のスピードメーターの間に、油温計と水温計が縦に並ぶ。タコメーターは6000rpmから警告(赤い斜線)表示で、6500rpmからレッドゾーンとなっている。メーター類はスミス製が採用されている。


センターに3眼メーターを装備。左から油圧計、燃料計、時計が並ぶ。ラジオはAM/FM両対応。



ミッションは4速MTで、シフトレバーは左上にリバースギアが位置するタイプとなっている。


黒いレザー張りシートには、後席から操作可能な可倒式の機構が備わっている。ボルボが59年に実用化し、世界で初めて3点式シートベルトを装備したPV544からの伝統による安全面への配慮がしっかり受け継がれている。



>>タイトなキャビンスペースだが、後席シートが備わっている。しかしこのモデルは、登録上は2人乗りとなる。本国では2+2として販売されていたが、日本に正規輸入された際に2人乗りで登録されたとのこと。後席の背もたれを倒すことで、荷台としても利用可能だ。


【すべての画像を見る】

主要諸元 SPECIFICATIONS
1971年式 ボルボ P1800E

●全長:4330mm
●全幅:1690mm
●全高:1280mm
●ホイールベース:2450mm
●トレッド:前後とも1315mm
●車両重量:1120kg
●乗車定員:2名
●最高速度:185km/h
●最小回転半径:3.98m
●エンジン型式:B20E型
●エンジン種類:直列4気筒OHV
●総排気量:1986㏄
●ボア×ストローク:88.92×80.0mm
●圧縮比:10.5:1
●最高出力:135hp/6000rpm
●最大トルク:18kg-m/3500rpm
●電子制御燃料噴射装置:ボッシュ・Dジェトロニック
●燃料タンク容量:30リットル
●トランスミッション:OD付き4速MT
●ステアリング形式:カムアンドローラー式
●サスペンション前/後:独立ウイッシュボーン・コイル/トルクロッド式
●ブレーキ:前後ともディスク
●タイヤ:前後とも165R-15
●生産台数:3万9414台(P1800/P1800S含む)

初出:ノスタルジックヒーロー 2020年10月号 Vol.201
       (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 ボルボ P1800E(全2記事)

関連記事:欧州名車列伝
関連記事:ボルボ

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Masami Sato/佐藤正巳

RECOMMENDED

RELATED

RANKING