ボルボ自らがレストアしたクーペ【前編】2台の部品取り車を用意し始められた作業|1971年式 ボルボ P1800E

前オーナー時代は濃紺のカラーリングだったが、オリジナルにこだわりボルボ純正カラーのサファリイエローにオールペイントされている。塗装はすべてボルボ・カー・ジャパン指定の認定板金工場が担当している

       
【欧州名車列伝|1971年式 ボルボ P1800E Vol.1】

スウェーデンを代表するブランド、ボルボ。
そのボルボが1961年に発売した2ドアクーペ/3ドアワゴンのスポーツカーがP1800だ。
既存のセダン/ワゴンであるボルボ・アマゾンのシャシーに、イタリアのカロッツェリア・フルアのデザインによるボディを組み合わせ、流線型の美しいボディラインを作り出している。

エンジンは発売当初は直列4気筒OHV1.8リットルのB18型を搭載。
ツインキャブレターで100hpを発揮した。
その後細かなバージョンアップでエンジン出力が向上された後、1969年には2リットルで118hpのB20型を搭載。
さらに1970年には、電子制御式インジェクションのボッシュ製D-ジェトロニックを搭載したB20E型エンジンに変更。
最高出力は130hpに到達した。
その後シューティングブレークスタイルのP1800ESなどにも派生したが、登場から1年後の1973年にはP1800自体の生産が終了している。

【画像16枚】当時流行していたアメリカ車風のテールフィンもデザイン上の大きな特徴。ボディカラーのサファリイエローは発売当時と同じ色味を再現してオールペイント


>>前後のオーバーハングが長く、コンパクトなキャビンとなっている。現在のボルボのラインアップには存在しない、車高の低い2ドアクーペボディとしている。

今回紹介する1971年式P1800Eは、取材当時の2020年、ボルボ・カー・ジャパン社長を務めていた木村隆之さんの愛車であり、ボルボ・カー・ジャパン自身がフルレストアを手掛けた1台だ。

もともとこの個体は、ボルボ・カー・ジャパンの社員が十数年にわたって所有していたもの。それを2014年に社長就任に際して、木村さんが譲り受けたという。
実はこの時期には試験的ながら、850T–5Rのリフレッシュを手掛けて手ごたえを得ていたボルボ・カー・ジャパンでは、セクションをあげた取り組みとしてP1800Eのレストアに挑戦することになった。

現代のボルボ本社では、生産終了から半世紀近い時を経たP1800シリーズの純正部品など製造しておらず、入手できない部品が多かったという。そこで、部品取り用として新たに2台のP1800を入手。愛知県豊橋市にある、ボルボ・カー・ジャパン豊橋VDC(車両配送センター)に持ち込み、スタッフたちとともにレストアを実施した。

【後編】に続く



>>独特なフォルムを持つ流麗なデザインは、ピエトロ・フルアとその指導を受けたスウェーデン人デザイナーのペレ・ピーターソンによって生み出されたもの。



>>グリルまわりの美しい曲面構成もP1800のデザインの大きな特徴。やや湾曲したタイトなデザインのグリルも特徴的だ。



>>車名にある「E」とは、電子制御燃料噴射装置を示している。もちろん、リアのエンブレムは「E」の文字が目立つ設定となっている。


>>純正ホイールは、P1800から1800Eへのモデルチェンジ時に一新された。

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主要諸元 SPECIFICATIONS
1971年式 ボルボ P1800E

●全長:4330mm
●全幅:1690mm
●全高:1280mm
●ホイールベース:2450mm
●トレッド:前後とも1315mm
●車両重量:1120kg
●乗車定員:2名
●最高速度:185km/h
●最小回転半径:3.98m
●エンジン型式:B20E型
●エンジン種類:直列4気筒OHV
●総排気量:1986㏄
●ボア×ストローク:88.92×80.0mm
●圧縮比:10.5:1
●最高出力:135hp/6000rpm
●最大トルク:18kg-m/3500rpm
●電子制御燃料噴射装置:ボッシュ・Dジェトロニック
●燃料タンク容量:30リットル
●トランスミッション:OD付き4速MT
●ステアリング形式:カムアンドローラー式
●サスペンション前/後:独立ウイッシュボーン・コイル/トルクロッド式
●ブレーキ:前後ともディスク
●タイヤ:前後とも165R-15
●生産台数:3万9414台(P1800/P1800S含む)
【後編】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2020年10月号 Vol.201
       (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 ボルボ P1800E(全2記事)

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text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Masami Sato/佐藤正巳

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