「キャンパーシェルをつけたほうがジャンプシートに座る人は安心するみたいですね」|1986年式 スバル ブラット【5】

「散らかってて汚いから」とキャビンをのぞきながらユキさんは言った。確かに、毎日の足グルマ感たっぷりのキャビンだ。きれいなダッシュボードカバーは前オーナーの手作りだそうで、ピッチリとフィットしていた。オドメーターの表示は20.6万マイル。なんと33万キロも走っているということだ

日本のメーカー製のクルマでありながら、日本国内では販売されない、いわゆる海外専売のクルマは少なくない。富士重工業が1977年に初代、81年に2代目を発売したスバル・ブラットもその中の1台だ。そんな日本で生まれて北米で販売されたピックアップと、日本生まれでアメリカに移住したクルマ好きがオークランドで出合った。

【アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第50回 1986年式 スバル ブラット vol.5】

日本から弟夫婦が訪ねてきた際には、荷台の席に乗ってもらって一緒にドライブに出かけた。

「キャンパーシェルをつけたほうがジャンプシートに座る人は安心するみたいですね。空気抵抗が減るせいかキャンパーをつけると燃費も良くなります」

通勤の足としても快調だ。会社のあるサンタクララ市まで渋滞の激しいフリーウェイを毎日往復3時間。それでもトラブルに見舞われたことはない。

週末にはハワイで学んだ空手の教室を開くかたわら、時間の許す限りガレージでクルマと過ごす。目下の目標は2台あるポルシェ914のうち修理中の1台を仕上げること。その間にも時々、友人が914の修理を頼みにやって来る。

「地元で名の通ったショップで修理したという車両でも、仕上がりの良くないものがありますね」

仕事でもプライベートでも好きなクルマに接し続けているからこそ分かるクルマのクセと整備のコツがある。

母国を離れて24年。旧車と出合い、その趣味に高じた日本人が一人、公私共々クルマありきの生活を営みながら異国の地に根を下ろしていた。

【画像15枚】母国を離れて24年。仕事でもプライベートでもクルマ漬けの生活を異国の地で。グローブボックスに入っていたオーナーズマニュアル。表紙にはブラットのシルエットが描かれていた。自宅ガレージは大きく、クラシックポルシェが3台、悠々と収めてあった。天井から吊ってあったのはブラット用のキャンパーシェルで、車体をその下に移動してひとりで脱着できるようにしてあるのだ


>>運転席から天井を見上げるとルーフ後部にある室内灯が目に入る。回転式になっていてマップライトとしても使える設計のようだった。でも実際には「とても使い物にならない」ので、ユキさんはLEDライトを自分で取り付けた。





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初出:ノスタルジックヒーロー2019年8月号 Vol.194
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


ニッポン旧車の楽しみ方第50回 スバル・ブラット(全5記事)

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text&photo:Hisashi Masui/増井久志

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