空冷フラット4のビートルから愛車はポルシェへ。片道60kmの通勤用に使い勝手のいいクルマを探す|1986年式 スバル ブラット【2】

ブラットの走行中に受ける印象は「とても軽快に走っていく元気なクルマ」というもの。決してパワフルではないのだが、車重が1トン足らずと軽いからだろう。ブラットのフロントマスクは年式によって異なっていて、初代は丸形2灯の前期型から4灯の後期型へとフェイスリフトされた。2代目の前期型は角形2灯で中央の回転式エンブレムの内側に補助灯が一つつくという、変わった仕組みを持っていた

日本のメーカー製のクルマでありながら、日本国内では販売されない、いわゆる海外専売のクルマは少なくない。富士重工業が1977年に初代、81年に2代目を発売したスバル・ブラットもその中の1台だ。そんな日本で生まれて北米で販売されたピックアップと、日本生まれでアメリカに移住したクルマ好きがオークランドで出合った。

【アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第50回 1986年式 スバル ブラット vol.2】

10年間過ごしたハワイのあと、クルマを手放してアメリカ本土東部のペンシルバニア州に引っ越した。ほどなく奥さんの仕事でカリフォルニアへ引っ越したのが12年前(2018年当時)のことだった。そこで見かけたのはポルシェ914。空冷フラット4エンジンを持つクルマである。子供のころに見た新車の914の記憶がみるみるうちによみがえったという。

「どっちが前か後ろか分からないようなデザインが記憶に残っていました。それで914を手に入れて、それからエレファント・レーシングに客としてかかわるようになったんですね。それが、ショップに通ううちに親しくなって『じゃあうちで働かないか』ってことになったんです」

現在ユキさんが働くエレファント・レーシング社は、ポルシェ用のサスペンション改造で名の通ったパーツメーカーだ。ユキさんはメカニックとして、自社製品を顧客のクルマに取り付けることを担当している。この仕事を始めてから、通勤用に使い勝手のいいクルマが必要になった。通勤距離は片道およそ60km。

【画像15枚】ポルシェ914は子供のころの記憶もあって購入した。その繋がりもあって現在の職場に。オークランド市内の緑に囲まれたユキさんの自宅では、スバル・ブラットは敷地の門に近いこの位置にいつも止めてある。1986年式のこの個体は2代目後期型に相当する


>>ユキさんの働くエレファント・レーシング本社。作業場は広々としていて清潔な雰囲気だった。作業中のクルマに併せ、むき出しで置いてあったエンジンは、昨年Vonnenというブランド名で発売したポルシェのハイブリッド化キットを搭載したもの。「ブラットは昔はよく見かけたんだけどね。最近は見なくなったね」と社長のチャック・モアランドさんがコメントした。


>>土曜日の午前中、ユキさんは特技を生かして近所の人たちに空手の指導をしている。ガレージのクルマを外へ出して場所を作り、壁に備え付けた大きな鏡の前で生徒たちが練習をしていた。


【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年12月号 Vol.190
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


ニッポン旧車の楽しみ方第50回 スバル・ブラット(全5記事)

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text&photo:Hisashi Masui/増井久志

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