最後にマツダの軌跡。日本チーム初優勝をするのに、幾度の路線変更を繰り返していた!|2019 ル・マン24時間レース【4】

1989年、ル・マンに出場したマツダの車両767。

【3】から続く

度々ル・マンのレギュレーションが変更され対策してきた日産だったが、あえなくリタイアするレースが多かった。初の表彰台に立つことができたのは1997年であった。今回は紹介する3つのチームの中で最も歴史のあるマツダの軌跡について触れる。

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 日本メーカーで、最も古くからル・マンとかかわりを持ってたのがマツダだった。マツダが、コスモスポーツ、ファミリアロータリー・クーペで海外レースへの参戦を行っていた時代で、1970年にベルギーのプライベートチームが、シェブロンB16に10A型ロータリーエンジンを搭載して出場したのが初のル・マン参戦だった。もちろん、直接日本のマツダがかかわる体制ではなかったが、オブザーバーとして広島からエンジニアは派遣されていた。

 その後、シグマ(現SARD)からロータリーエンジン搭載車がル・マンに参戦したが、マツダというかたちでの参加は1979年が初めてだった。ただ、マツダ(東洋工業)というかたちではなく、マツダオート東京(後のマツダスピード)を拠点とするディーラー規模のチームで、車両も量産車サバンナRX-7(SA22C)ベースのグループ5仕様(IMSA-GTU仕様)の252iだった。この車両は、1981年に253、1982年に254へと発展。

 ル・マンがグループCカー時代の2年目となる1983年、グループCジュニアの717Cを開発して純レーシングカーのクラスに路線転換。717Cは、ル・マンのコース性格を想定した最高速度重視型の設計で13B型エンジンを使い、ボディデザインを由良拓也、シャシー設計を宮坂宏が担当。初出場ながら2台とも完走、総合12位でクラス優勝も勝ち取る成績を残したが、走行タイムは254と大差なく、高速での操縦安定性にも欠けたことから、必ずしも成功作とは言い難い車両だった。

 翌1984年は、ボディ/シャシーの見直しを大幅に図った727C、さらに1985年は正常進化型の737Cで活動を続けたマツダは、1986年に上位入賞を狙える3ローターエンジン搭載車、IMSA-GTPクラスの757を開発して投入。1986年はトラブルで全車リタイアしたが、根本的な対策を施した1987年、総合7位で完走。IMSA-GTPクラスの優勝も勝ち取った。

 この好結果に大きな刺激を受け、1988年には4ローターの13J型エンジンを開発。新設計のシャシー767と組み合わせて2台を投入したが、トラブルによって後退。最上位は抑えで投入した3ローターの757だった。

 1989年は、エンジン、シャシーとも大幅に見直した3台の767Bで参戦し、総合7位、IMSA-GTPクラス優勝の好結果を得たが、優勝争いのレベルにはほど遠く、次年は全体をレベルアップした車両が必要不可欠と判断され、787が計画された。

 1990年に登場した787は、767系からモノコックをカーボン製に変更。ボディデザインも全面的な見直しが図られ、直線スピードを重視した形状で作られた。しかし、投入された2台はリタイア。抑えで参加した767Bが20位で完走という結果だった。  

 そして1991年、グループCカー規定がNA3.5L仕様に変更された。従来のターボCカーはハンディを負う車両規定となったが、IMSA-GTPクラスは制限が加えられず、787Bにとって有利な状況となった。

 ロータリーは今年が最後と背水の陣で臨んだ787Bは、F1トリオが操る55号車が快走。念願の日本車によるル・マン総合優勝を手に入れた。

【画像35枚】もっともル・マンとの関わりが深いマツダ。結果に満足せず進化し続けた結果、日本チーム初の優勝を飾ることができた



>>マツダとして、というより、日本がル・マンに関わった最初の年が1970年。ベルギーのプライベートチームがシェブロンB16㊽に10A型ロータリーエンジンを搭載する車両が初だった。



>>マツダ車は、マツダオート東京が1979年よりル・マンに参戦。13B型エンジンを積むRX-7のグループ5仕様252i(正確にはIMSA-GTU規定)で臨んだが僅差で予選通過のタイムに届かなかった。



>>1980年は欠場。2台の253で参戦した1981年は、ストレートで思いの外伸びなかったがコーナーが早く両車とも決勝進出。しかし、2台ともトラブルで早々に姿を消した。



>>グループCカー時代となった1982年の大会にIMSA-GTX規定の254で参戦。前年同様2台体制だったが、信頼性を向上させた結果、82号車が総合14位、クラス優勝を果たした。


【1】【2】【3】から続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年10月号 Vol.195

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

2019年 ル・マン24時間レース(全4記事)

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