【第四話[3]】旧車整備で厄介な電気系の修理も終わり、いよいよ路上復帰の準備が完了|旧車復元プロジェクト

新品タイヤを履いて、路上復帰の準備は整った。次回は、いよいよ屋外に飛び出して、実際に走行させて最終チェック!

       
【2】から続く

S600の復元プロジェクトもいよいよ大詰め。今回はエンジンを始動させての最終点検で、完了すれば路上復帰が可能。車検も通せる状態になる。

【GLION MUSEUM presents 旧車復元プロジェクト 第四話[3] 1964年式 ホンダ S600】

水回りでは、サーモスタットが未装着となっていたため、純正と同じ開弁温度82℃タイプを装着し、冷却系にも問題はなくなった。ちなみに柘植さんによると、サーモスタットを取り外すのは、オーバーヒート気味な車両の簡易的な対処法としてひと昔前にはけっこう行われた手法らしい。

「たぶん、オーストラリアを走っていた頃に、すでに外されていたんだと思います。向こうはほとんど渋滞もなかったろうし、『走行風を当てていれば、大丈夫』くらいの考えだったのでしょう。ま、日本でも昔の整備はそんなノリでしたよ(笑)」

路上復帰するための必須項目となる灯火装置の点検は、念のため全てのバルブを新しいものに交換して作動をチェックする。そして、ここで右側のヘッドライトが点灯しないことが判明した。なかなか原因がつかめず、スイッチやアースの不良等も疑われたが、最終的に配線のギボシ端子の接触不良であることが分かり修理を行う。

「電気系は旧車整備の難所。特に老朽化した配線が厄介です」とテスターを手に柘植さんは悪戦苦闘する。エンジンを始動させても動かなかった電流計と燃料計、さらに華氏から摂氏表示に変更された水温計は、メーターまわりの配線とダイナモからの配線、両方に問題があることを探り当て、配線を修復してようやく解決。メーター類も全て正しく機能することが確認できた。

インテリアではドアパネルを外してウインドーレギュレーターの作動確認やヒンジ部へのグリスアップが行われ、また、気になる部分の簡単なサビ取り補修なども行われた。最後に劣化の進んだバイアスタイヤを真新しいラジアルタイヤに履き替え、いよいよ路上復帰の準備が完了となった。

S600復元企画の最終回となる次回は、実際に公道を走る模様と、仕上がりの詳細を紹介する。

【画像29枚】電気系は、老朽化した配線の問題などもあるため、旧車整備において厄介な点だという


>>ドアパネルを外してウインドーレギュレターの作動を確認。内部を清掃し、グリスアップすることで動きが一段とスムーズになった。


>>S600のオリジナルのタイヤサイズは前後ともに5.20-13-4PR。履き替えたタイヤはその外径に一番近い165-70サイズ。銘柄はトーヨーのSD-k7だ。


チーフメカニック/柘植俊哉さん

これまでも、国産、輸入車を問わずさまざまな不動車を復活させてきた柘植さん。「不動車のエンジンが再び回り始めたときの感動は、何ものにも代え難いものがあります」と話す。




GLION MUSEUM ジーライオンミュージアム

「見る」から「買う」まで、旧車と人のつながりをサポートするジーライオンミュージアム。あこがれの旧車や、まだまだ普段も乗って楽しめる第二世代のGT-Rなども展示販売。11月30日と12月1日には、「クラシックカーオークション」が開催される。







初出:ノスタルジックヒーロー 2018年 12月号 Vol.190

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


旧車復元プロジェクト vol.4 1964年式 ホンダ S600(全3記事)


関連記事: 旧車復元プロジェクト



【1】【2】から続く

Text:Isao Katsumori(ZOO)/勝森勇夫(ズー) photo:Ryota-Raw Sshimizu(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックスブックス) cooperation:Glion Museum/ジーライオンミュージアム

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