【第二話[1]】ホンダS600にこびりついた土とオイルの固着物を一掃!|旧車復元プロジェクト

ホンダS600の復元はまず洗浄からスタート。

       
ジーライオンミュージアムが巨大なストックヤードに保管する不動車を、走行可能な状態にまで持っていく過程を紹介する本企画。第1弾の対象として選んだモデルはホンダのS600だ。ベース車選びも終わり、いよいよレストア作業のスタートだ。

【GLION MUSEUM presents 旧車復元プロジェクト 第二話[1] 1964年式 ホンダ S600】

【画像26枚】 ホンダS600の足まわりにこびりついた土やオイルをきれいに落としていく

前回、ジーライオンムミュージアムのストックヤードで、ベース車候補となったホンダのエスは全8台。その中から、チーフメカニックの柘植俊哉さんのプロの目による比較検証の結果、1964年式の真っ赤なS600が選ばれた。

希少なS500も候補に上がったが、程度的にもオリジナルの状態に近いという点においてもこのS600が最良で、柘植さんの評価も星4つとかなりのレベル。湿度が低いオーストラリアで車齢を重ね、帰国後もコレクターにより屋内保管されていた由緒正しき帰国子女。「路上復帰の道のりも、この状態ならいたってスムーズなはずです」と柘植さんは太鼓判を押す。

とはいえ、64年生まれで還暦も間近。主要諸元に間違いがなければ、S600の中ではもっとも早い段階で生産された初期型となる。マイル表示となるスピードメーターに刻まれた距離は5万6075マイルで、キロメートルに換算すると9万5071㎞に相当する。路上復帰のための本格的なメンテナンスは、まず半世紀分の汚れを落とすこと。ボディ全体の高圧洗浄作業から始められた。

洗車ではなく洗浄作業というのは、実はこれが思いのほか重労働。特に大変なのが、足まわりに固着した土とオイルが混ざった頑固な固まりの除去だ。ブーツが破れて漏れたグリスと、オーストラリア大陸特有の鉄分を含んだ赤土が混ざり合って、まるで石膏のようにサスペンションアームを覆っている。

高圧洗浄機の水圧をもってしても落ちない頑固な固着物は、バールやマイナスドライバーを使ってそぐように落とし、洗い流していく。足まわりでは、ブレーキドラムを外して内部も洗浄し、こびりついたグリスやブレーキダストも一緒に洗い流された。ちなみに柘植さんによると、この年代の旧車は、しっかり汚れを落とそうとしたら、アンダーボディだけでも丸3日はかかるそうだ。汚れにも64年生まれのS600の歴史の重みを感じる。

--{足回り各部を洗浄前/洗浄後で比較}--


>>[Before]ダブルウイッシュボーン構造となるS600のフロント足まわり。アームにはダメージはないようだが固着物がひどく、このままでは細部までチェックすることができない。


>>[after]スチーム洗浄により固着物が落ちて、アームの状態も確実にチェックできるようになった。ブレーキユニットを外し、分解作業に取りかかる。



>>[Before]チェーン駆動方式となるリアサスペンションまわり。フロントと比較すると汚れの度合いは比較的ましな印象。スチーム洗浄でキレイにできそうな感じだ。



>>[Before]ブレーキを洗浄するためにブレーキドラムを外す。柘植さんはついでにドラム内側の減りをチェックしていた。


>>[after]ドラムブレーキの内部も洗浄によってダストがキレイに洗い流されている。インナーフェンダーのシャシーブラックが除去され、鮮やかなボディカラーの朱色が見えてきている。



【2】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2018年8月号 vol.188
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

GLION MUSEUM presents 旧車復元プロジェクト 第二話(全2記事)

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text:ISAO KATSUMORI(ZOO)/勝森勇夫(ズー)photo:RYOTA-RAW SHIMIZU(FOXX BOOKS)/清水良太郎(フォックスブックス) cooperation:GLION MUSEUM/ジーライオンミュージアム

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