わずか35台のみが製作された、その悲しくもある理由|1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン【2】

4ドア版シルバーシャドウとまったく変わらないシルエットは、コーニッシュと比べると若干野暮ったくも見えるが、独特の魅力もたたえる。

       
【1】から続く

有名なコーニッシュではなく、4ドアのシルバーシャドウでもない。シルバーシャドウのシルエットを持つ2ドアサルーンは、かつて栄華を誇ったコーチビルダー、ジェームズ・ヤングの作品。生産台数はわずか35台という、非常にレアなモデルである。

【輸入車版懐古的勇士  1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン vol.2】

ジェームズ・ヤングは1863年に、英国ケント州ブロムリーに創業。20世紀初頭までは「ブロムリー・ブロアム(Brougham:乗合馬車のこと)」という屋号を称していたことからも分かるように、もともとは馬車用のボディを専ら架装するコーチビルダーであった。が、1908年に当時最新鋭の産業であった自動車用ボディの製作に乗り出すことになった。

自動車分野への進出を図った直後からR‐R/ベントレーを得意としたジェームズ・ヤングは、第二次大戦後にもR-RファントムⅤツーリングリムジンなどの傑作を残していたが、やはり時代の波にはあらがえず、次第にコーチワーク事業を縮小していく。

そんな折、66年から発売されたシルバーシャドウ2ドアサルーンは、ベース車である4ドアサルーンのボディを、ほぼそのまま2ドア化したもの。マリナー・パークウォード製スポーツサルーンとは違ってボディパネルやウインドーの多くをシルバーシャドウ標準サルーンと共用していた。

これはモノコックを流用する以上は不可避的な判断だったが、格段にスタイリッシュなマリナー・パークウォード製クーペが発売されるに至って、武骨な印象の否めなかったジェームズ・ヤングの2ドアサルーンは、訴求力を大幅に削がれてしまう。また4ドア車に対して価格も高騰したことから、結局翌67年までにR-R版35台+ベントレー版15台の合計50台のみ製作されるにとどまったのである。

【画像15枚】タコメーターを持たないのは、現代にも継承されるR-Rの伝統。ウインカーのようにも見える小さなレバーは、ATセレクターである


>>全面カーペット張りの豪華なラゲッジスペースは、十分という以上の広さを持つ。


>> R-Rのメーカープレートが付けられるのは、このジェームズ・ヤング製サルーンが同社オフィシャルのモデルであることの証明。
 


>>いかにもロールス・ロイスらしい、分厚いクッションの革張りシート。レザーハイドはもちろん、英国コノリー社製。



1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン

全長×全幅×全高 5169×1829×1519mm
ホイールベース 3035mm
トレッド前/後 1461/1461mm
車両重量 2067kg
エンジン種類 水冷V型8気筒OHV
総排気量 6230cc
トランスミッション ターボハイドラマチック3AT
サスペンション 前ダブルウイッシュボーン+コイル/後セミトレーリングアーム+コイル
タイヤサイズ 205HR15



【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Jyunichi Okumura/奥村純一

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