名門ジェームズ・ヤングの終焉。今世紀に入って見えたコーチビルド伝統復活の兆し|1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン【3】

ごく初期のシルバーシャドウは、前任モデルのシルバークラウドⅢと大きくは変わらないデザインのダッシュパネルとされていた。

       
【2】から続く

有名なコーニッシュではなく、4ドアのシルバーシャドウでもない。シルバーシャドウのシルエットを持つ2ドアサルーンは、かつて栄華を誇ったコーチビルダー、ジェームズ・ヤングの作品。生産台数はわずか35台という、非常にレアなモデルである。

【輸入車版懐古的勇士  1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン vol.3】

1904年の創業以来、すべてのロールス・ロイスのボディは独立したコーチビルダーが架装するのが伝統とされてきた。しかし、49年に誕生したR‐R初の自社製スタンダードボディ車「シルバードーン」によって、その伝統が打ち破られると、戦前から既にR‐R社傘下に収まっていた「パークウォード」、およびR‐R/ベントレーの試作車や極少量生産モデルの架装も請け負う「H・J・マリナー」以外のコーチビルダーがオフィシャルとして準制式ボディを製作する機会は極端に限定されていく。

さらに、61年にH・J・マリナーとパークウォードの両雄がR‐R傘下で合併し「マリナー・パークウォード」となると、特装ボディ外注の一本化はさらに進行。その結果として、一世紀もの歴史を誇る名門ジェームズ・ヤングは、この2ドアサルーンの製作を最後に、新車製作を行うコーチビルダーとしての活動を停止してしまう。そして、第二次大戦前以来の親会社であった老舗のR‐R/ベントレー・ディーラー、現在では世界最古のベントレー・ディーラーとして名声を誇る「ジャック・バークレー」の特装車両製作部門へと業態を変えることになる。

ジェームズ・ヤングの終えんを最後に、マリナー・パークウォード以外のコーチビルダーがR‐Rボディを公式に製作した事例は長らく途絶えていたのだが、今世紀になってピニンファリーナの「ハイペリオン」、R‐R自社製の「スウェプテイル」が登場。伝統の復活の兆しが見え始めているのだ。


【画像15枚】訴求力を大幅に削がれたジェームズ・ヤングの2ドアサルーンは結局、R-R版35台+ベントレー版15台の合計50台のみ製作されるにとどまった



>>初期のシルバーシャドウは、前任のシルバークラウド譲りの6230ccエンジンを搭載。スペックは伝統に従って未公表。


>>中央にイグニッションスイッチを持つのも、戦前以来の伝統。この個体は後付けのエアコンディショナーが装備される。


>>当然のことながら、リアコンパートメントの広さや快適さは4ドア版シルバーシャドウと不変。



英国旧車の博物館  ワクイミュージアム

埼玉県加須市のワクイミュージアムは、輸入車販売会社ワク井商会によって開設された個人ミュージアム。イギリスを代表するロールス・ロイスとベントレーのクラシックカーが集められており、現存する最古のベントレーも収蔵されている。






1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン

全長×全幅×全高 5169×1829×1519mm
ホイールベース 3035mm
トレッド前/後 1461/1461mm
車両重量 2067kg
エンジン種類 水冷V型8気筒OHV
総排気量 6230cc
トランスミッション ターボハイドラマチック3AT
サスペンション 前ダブルウイッシュボーン+コイル/後セミトレーリングアーム+コイル
タイヤサイズ 205HR15



【1】【2】から続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 ロールス・ロイス シルバーシャドウ ジェームズ・ヤング製2ドアサルーン(全3記事)

関連記事:輸入車版懐古的勇士

関連記事:ロールス・ロイス

text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Jyunichi Okumura/奥村純一

RECOMMENDED

RELATED

RANKING