たどり着いたのは元オーナー。クルマ人生の中でも大きなポイントとなった思い出【2】1969年式 ダットサン ブルーバード 1600 SSS

特集のトビラは、ブルーの背景のバックショット

       
「創刊のころに取材したクルマとオーナーを訪ねる旅」。発想のきっかけとなったのは、Vol.8の表紙を飾ったオレンジ色の510ブルだった。
今もその個体は元気で走っているのか?
それを追いかけるためであれば、日本中どこへでも出かけて行くつもりでいたのだが……。

【1969年式 ダットサン ブルーバード 1600 SSS Vol.2】

【1】から続く

 元オーナーとは、インターネットを通じて連絡が取れた。ノスタルジックヒーロー編集部からの突然の電話で少々びっくりされたようだが、快く取材の時間を取ってくださった。

「この510の記事を見ると、今でも涙が出そうになるんですよ。いろいろな思い入れがあって……この白のオリジナルの姿を見ると、心に刺さります。当時ノスヒロさんから取材のお話が来て表紙に載せてもらって、それは私のクルマ人生の中でも大きなポイントとなった思い出なんですよ」

 仕事終わりの夜に工場で会って間もなく、元オーナーから510ブルーバードへの思いがほとばしった。

 表紙に載った1600SSSは、すでに9年前の6月に手放したそうで、その他に何台も持っていた510も売却。510を降りてからはハーレーの趣味にのめり込んでいるという。しかし、510と過ごした時間の記憶は、今もなお鮮明に残っていた。

 「最初の510の取材の時は、カメラマンの但馬治さんと編集部の方が来られて、横浜市の清掃工場の近くで撮影をしました。30年前はまだまわりが畑で、あたりに何もないところでした。しかし空は雲で覆われていて、今にも雨が降り出しそうな感じ。撮影は短い時間で終わったと記憶しています」

 但馬カメラマンは、撮影前に被写体のクルマを徹底的に磨くのが常で、アシスタントと編集者で1時間以上磨きに費やすのが普通だった。それからすると短時間の撮影は意外な話だが、天候を考えれば仕方ないと言える。さらに手早く絵作りするために、シャッターを切る前にカラーフィルターを使ったようだ。曇り空のもとでそのまま撮ると画面がブルー系になる。それを補正するためにオレンジ系のフィルターを通してシャッターを切り、さらにバリエーションとして、曇り空を逆手に取り、色を強調するためにブルーのフィルターを使った。それらによって見応えのある写真を完成させたのだ。オレンジ色の510ブルは、但馬カメラマンの計算のうえでの作品だったのだ。

 元オーナーの510ブルは、その後サファリラリー参戦時のワークスカラーに塗り替えられて、ラリー仕様に仕立てられた。本誌Vol.34でその姿を取材させてもらっている。

「その後、ラリーの装備をすべて外して、ノーマルに戻しました。ボディ色も自分が好きな明るめの赤に塗り直して、車高も少し落とした感じでした」

 ある時、関西の輸入車販売店の人から譲ってほしいと声をかけられて、長年一緒に過ごした510ブルを売却。その後、別の人に渡ったそうだ。元オーナー以後の追跡はできず、会いに行くのは断念した。オレンジ色の510ブルは、永遠の幻となってしまった。

>> 【画像10枚】現在まで続く写真をフィーチャーした誌面構成など








>> 1台の510ブルーバードを6ページ使って紹介。現在まで本誌で続く写真をフィーチャーした誌面構成は、創刊当初から続けてきたものだ。そして綴じ込みピンナップも、このVol.8からスタートしている。



初出:ノスタルジックヒーロー 2018年8月号 Vol.188
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 ダットサン ブルーバード 1600 SSS(全2記事)

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【1】から続く

photo : NOSTALGIC HERO/編集部

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