70年代のトラックなのにオートマ、ディスクブレーキ採用! アメリカ市場を意識した620|ダットサン・トラックのアメリカでの歴史を振り返る|1978年式 ダットサン トラック キングキャブ Vol.4

620のリアビューはテールランプをリアゲート下部に配置した521のデザインが保たれた。ロープを掛けるフックがベッドの周りにつくのは、当時の日本製ピックアップトラックの特徴。アメリカンピックアップにはなかったこんな便利なものが、現在のピックアップからはなくなってしまった。後付けの格納型フックがアメリカでは一般的。

       
移民の国、アメリカ。建国から2世紀以上を経た現在まで絶え間なく世界各国からの移民を受け入れ、人々は社会に溶け込みアメリカ文化を確立する原動力となっていく。ドイツ、日本、そしてブラジルに自分のルーツを持つオーナーが、ダットサン240Zを好きになったのをきっかけに、ニッポン旧車を持つ生活を楽しみ始めた。 

【1978年式 ダットサン トラック キングキャブ Vol.4】

【3】から続く

 日産は技術の発展とともに、量産乗用車に積極的にモノコック構造を採用するようになっていった。イメージ的に理解すればフレーム構造はベッド、モノコック構造は卵。モノコック構造には軽量化の利点がある。フレーム構造は架装する車体上部を載せ替えるだけでさまざまな車種を造れる半面、トラックの過積載にも耐えうる頑丈なフレームを作ろうとすると、大幅な重量増加になるという弱点がある。

 410系乗用車(1963年)ではついにフルモノコック構造へと進化し、時代的に並行した520系トラック(1965年)との構造的共通点がなくなった。410はピニンファリーナのデザインを採用した意欲的な乗用車だったこともあり、520にはデザインの統一感を持たせた。乗用車が510系(1967年)へと発展すると、520は521へマイナーチェンジし(1968年)、510とのデザインの共通性を保持させた。

 620系トラック(1972年)からは610系ブルーバード(1971年)や710系バイオレット(1973年)とのデザイン的共通性にこだわらない、独自のトラックとして独立した。アメリカ市場を意識した直線の鋭さと曲線の抑揚を生かした自由なデザインだけでなく、北米仕様はL型エンジン搭載、オートマの設定、ディスクブレーキ採用など、国内仕様との差別化を果たした。その620はアメリカで「ダットサン」を名乗った最後のトラックとなった。


>>【画像14枚】キングキャブは足元が広いのがいいと言うマスイさん。日本国内には設定のなかったオートマ仕様など





エンジンはL20B型を搭載。日本国内仕様のどの車種にも使用されなかった4気筒で最大排気量を持つL型エンジンだ。



【5】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年4月号 vol.180(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ダットサン・トラックの姿に魅せられて(全5記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志

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