国内では「エステートV」という名の商用車|1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン

リアフェンダー上部の窓枠の部分がグッと盛り上がる「コークボトルライン」は、当時のアメ車の流行から影響を受けたデザインだ。

       
クルマの世界でOEM(相手先ブランド)モデルというのは、現在、日本国内で発売されている新車でもかなり多く存在している。時をさかのぼって1970年代のアメリカでは、ビッグスリーの一角、クライスラーでも、三菱自動車と提携して小型乗用車のOEMモデルを用意、ダッジ・ブランドで販売していた。そんな1台がここで紹介するダッジ・コルトワゴンだ。オーナーとそのフィアンセの生活の足として使われる赤いワゴンを紹介する。

【1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン Vol.4】

【3】から続く

 本来「コルト」という車名は、1962年から次々と発売された三菱の一連の小型車につけられた名前だった。日本国内におけるクルマの普及に合わせて、三菱は1969年に乗用車のラインナップを一新。「コルトギャラン」として新生スタートさせた。この時期にはGTOやFTOなどのホットモデルも生み出されたのはよく知られるところだが、半面商用車のバンも独自の主張を持っていたことは、実は注目に値するのである。

 法規上の分類では商用車でありながら「エステートV」という豪華な名を与え、ラグジュアリーさとレジャーの楽しさを前面に押し出して、競合車種との差別化を図った。このエステートVは輸出にあたり、ワゴンがファミリーカーとして普及していた北米では「ステーションワゴン」の名で販売された。

 1973年に登場した2代目が「ギャラン」を名乗ったことで日本国内ではコルトの名前が途絶えたものの、北米市場を始めとする海外市場ではコルトの名称は連綿として使われ、世界各地でコルトと言えば三菱車の代名詞ともなっている。2002年には日本国内に復活したこの名は、旧来の三菱車を思わせる感慨深いものだった。わずかな期間だけで再び消滅してしまったが、それも一時的であることを祈りたい。

>>【画像14枚】日本国内仕様のエステートVは商用車であったため、法規上の必要から窓内側につけられていた保護棒。アルミ製ブロックを挿入して車高を2インチ下げたリーフスプリング式のリアサスペンションなど



ドアを開けてみてすぐに目に入ったのが、「COLT」の文字の入ったアルミ製のサイドステップ。続いてドアの内張りに入れられた装飾に目がとらわれた。これらの装飾は日本国内仕様にも同様に施されており、今日それを目にすると「エステート」としてその豪華さを誇りにしたこのクルマの主張が伝わってくる。ドアロックノブには「パワーロック」という文字が刻まれていた。


【5】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン(全6記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志

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