「もしかしたら、Zという存在もそう遠くないんじゃないか」|1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン

。ボンネット前端に「DODGE」のバッジがつくのがダッジ車の特徴的なデザイン。

       
クルマの世界でOEM(相手先ブランド)モデルというのは、現在、日本国内で発売されている新車でもかなり多く存在している。時をさかのぼって1970年代のアメリカでは、ビッグスリーの一角、クライスラーでも、三菱自動車と提携して小型乗用車のOEMモデルを用意、ダッジ・ブランドで販売していた。そんな1台がここで紹介するダッジ・コルトワゴンだ。オーナーとそのフィアンセの生活の足として使われる赤いワゴンを紹介する。

【1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン Vol.2】

【1】から続く

 初めてのクルマは結局、日産240 SX(S13)。「クルマをいじりながら峠を楽しむようになった自分がいる。もしかしたら、Zという存在もそう遠くないんじゃないか。そう思えてきたんです」
 いつでもZへと戻っていった思い。心の奥で目覚めつつあった思いを現実のものとすべく、弱冠20歳だったブリーズさんは人生の舵を大きく切った。Z専門の有名ショップの門を自ら叩き、プロフェッショナルメカニックとしての道を歩み始めたのである。

 仕事が好きで、長距離通勤もいとわずがむしゃらに働いた。そして1年ほどたったときに数奇な出来事が起こった。
「友達の父親が亡くなったんです。その人はコレクターで、150台ものクルマを持っていた。残されたコレクションを目の前にして友人も彼の母親もどうしていいか困り果てていた。そんな相談を受けたから一肌脱ごうと思ってクルマの処分を引き受けたんです。1台ずつ整備しながら1年かけて売りさばきました。ジャガーが多かったからその知識がずいぶん身に付いた」

 こうしてコレクション整理の仕事を終えたブリーズさんは、次に縁あってポルシェショップに勤めることになる。そこではクラシックの911と356をたくさん扱った。駆け足で旧車メカニックとしての経験を積み上げていったブリーズさんが自信をこめて言う。

>>【画像14枚】三菱は早くから採用していたチルトステアリング。角度調整のためのステアリングコラム脇にあるノブなど

「今勤めているこのショップはメタルワークの専門店です。今まではメカニックとしてやってきたから、今はここでボディワークとかシャシーのことを学んでいるっていうわけです」
 ぶつけられてテールのひしゃげていたコルトワゴンは、来るべきところにやってきた。そんな印象を受けた。



カーゴ室を広くするためには、後部座席のクッションを前方に跳ね上げてから、背もたれを前方に倒すことで行う。カーゴ室を観察して気づいたのは、カーゴ室側面の窓に保護棒が備わっていなかったことだ。日本国内仕様のエステートVは商用車であったため、法規上の必要から窓内側に保護棒がつけられていた。ハッチのヒンジ部分が一部白いプラスチックで覆われているのも、プラスチック部品が多用され始めたこの時代のワゴン車の特徴である。

【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン(全6記事)

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【1】から続く

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志

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