「このクルマが三菱製だと知っていたので、510のことは忘れてこっちを買うことにしました」|1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン

入口のシャッターが開いて赤いコルトワゴンが顔を出すと、それまで無機質だった路地がわずかな彩りを帯びた。

       
クルマの世界でOEM(相手先ブランド)モデルというのは、現在、日本国内で発売されている新車でもかなり多く存在している。時をさかのぼって1970年代のアメリカでは、ビッグスリーの一角、クライスラーでも、三菱自動車と提携して小型乗用車のOEMモデルを用意、ダッジ・ブランドで販売していた。そんな1台がここで紹介するダッジ・コルトワゴンだ。オーナーとそのフィアンセの生活の足として使われる赤いワゴンを紹介する。

【1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン Vol.1】

●プロメカニックの道を選択
 骨董品趣味、とまではいかなくともアンティーク品を探すのに慣れてくると、掘り出し物に出くわしたと感じた瞬間には、ピンッと神経が張りつめる。

「ダットサン510ワゴンを買いたくて探しているときに、たまたま見つけたんです。このクルマが三菱製だと知っていたので、510のことは忘れてこっちを買うことにしました」
 1973年式ダッジ・コルトワゴンのオーナー、リッチー・ブリーズさんは赤いワゴン車を脇にして、出合いは偶然だったと話を切り出した。

 クルマに特別の興味を持っていたわけではなかったという少年時代、ブリーズさんが思い出すのは好きだったプラモデルのこと。
「ガンダムのモデルを作ったりして遊んでいました。クルマは、ダットサン240Zだけはカッコいいと思って、なんとなくあこがれていたくらいです」
 高校を卒業し、遅まきながら免許を取って地元の町の商店に就職すると、通勤用のクルマに240Zを選ぶという考えも一度は頭をよぎったそうだ。

>>【画像14枚】プラスチック部品が多用され始めたこの時代のワゴン車の特徴である、一部白いプラスチックで覆われているハッチのヒンジ部分など

「でも、旧車のZを見つけるなんてその当時の僕にとってはユニコーン(1本角を持つ伝説上の動物)を追い求めるようなものだった。どこを探していいものか、皆目見当がつかなかったから」
 初めてのクルマは結局、日産240SX(S13)になった。このクルマに乗って、次第に峠走行を楽しむようになり運転の楽しさを体感した。すると、ある考えが頭に浮かんだという。





「サターンエンジン」の通称を持った4G32型エンジンを搭載。「この時代にクロスフローとは、進んでいたと思う」とブリーズさんはこのエンジンに対する印象を述べた。オリジナルのままのエンジンに接続された黒々としたエキゾーストパイプはブリーズさんが作り直したばかりのもの。エンジンルーム前端のプレートには「クライスラー向け三菱による日本製」と英語で刻まれていた。


【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 ダッジ コルト 1600 ステーションワゴン(全6記事)

関連記事: ニッポン旧車の楽しみ方

関連記事: コルト

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志

RECOMMENDED

RELATED

RANKING