はたらくクルマ 日本初、燃料電池大型トラックの走行実証を開始 FC大型トラック

今回使用するFC大型トラックの航続可能距離は約600km。環境性能と商用車としての実用性を兼ね備えたもので、水素を燃料とし走行中に温室効果ガスを排出しないのが大きな特徴だ。




アサヒグループジャパン株式会社(以下、アサヒグループ)、西濃運輸株式会社(以下、西濃運輸)、NEXT Logistics Japan株式会社(以下、NLJ)、ヤマト運輸株式会社(以下、ヤマト運輸)は、サステナブルな物流の実現に向け、2023年5月から水素を燃料とした燃料電池大型トラック(以下、FC大型トラック)の走行実証を開始する。FC大型トラックの走行は、日本で初となる。

近年、温室効果ガス排出量の削減など、サステナブルな物流の必要性が高まっているが、国内商用車全体の温室効果ガス排出量は全体の約7割※1を大型トラックが占めているという(日野自動車調べ。2023年3月末現在)。

特に幹線輸送に使われる大型トラックは、十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とする燃料電池システムが有効であると言われている。

そこで、トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)と日野自動車株式会社が共同で開発したFC大型トラックを使い、各社の実際の輸送業務にあたることで、水素燃料活用の可能性と実用性の検証が行われる。

開始時期は2023年5月から順次開始され、各社の輸送内容は以下のとおりだ。

【アサヒグループ・NLJ】
実証開始日:2023年5月19日(金)~
アサヒビール茨城工場(茨城県守谷市)でビールや清涼飲料を積み込み
→アサヒビール平和島配送センター(東京都大田区)で洋酒やワインなどを積み込み
→NLJ相模原センター(神奈川県相模原市)で荷下ろし
→関西からの荷物を積み込み
→アサヒビール茨城工場へ戻る

【西濃運輸】
実証開始日:2023年6月~
東京支店(東京都江東区)近隣の水素ステーションで燃料充填
→東京支店で荷物を積み込み
→小田原支店(神奈川県小田原市)で当該支店分を荷下ろし
→相模原支店(神奈川県相模原市)で当該支店分を荷下ろし
→東京支店へ戻る

【ヤマト運輸】
実証開始日:2023年5月17日(水)~
羽田クロノゲートベース(東京都大田区)近隣の水素ステーションで燃料充填
→羽田クロノゲートベースで荷物を積み込み
→群馬ベース(群馬県前橋市)で荷下ろし
→群馬ベースで荷物を積み込み
→羽田クロノゲートベースへ戻る

主な検証内容は以下の3項目。

運用面
・実稼働におけるドライバーにとっての使い勝手
・水素ステーションでの充填時間を含む運行管理

車両開発
・燃料電池システムおよび電動システム全般の作動検証
・環境や走り方の違いによる水素消費変化の把握と水素ステーションでの給水素情報の取得

そして、ドライバビリティ(車両の運転操作性)や使い勝手全般に関する情報の取得。

なお、今回使用するFC大型トラックの航続可能距離は約600km。環境性能と商用車としての実用性を兼ね備えたもので、水素を燃料とし走行中に温室効果ガスを排出しないのが大きな特徴だ。

燃料電池システムおよび高圧水素タンクは、トヨタのFC技術を応用し、大型トラックに最適化したFCスタック(=水素と酸素の化学反応によって電気を発電させる装置)を2基搭載。さらに、新たに開発した大量の水素を貯蔵可能とする大型高圧水素タンクを6本搭載。貯蔵した水素と大気中の酸素をFCスタックに取り込むことで発電し、その電気でモーターを駆動させることで車両が稼働する。

また、将来予定されている高速水素充填規格にも対応可能な水素充填口を装備しているところも注目点だ。



車両スペック
日野プロフィア(FR1AWHG)
・全長:11,990mm 全幅:2,490mm 全高:3,780mm
・車両総重量:25t
・FCスタック:トヨタFCスタック(固体高分子形)
・モーター:交流同期電動機
・高圧水素タンク:大容量高圧(70MPa)水素タンクを新開発
・駆動用バッテリー:リチウムイオンバッテリー
・航続可能距離:約600km(※都市間・市街地混合モードでのトヨタ・日野測定値)

このFC大型トラックでの走行実証がサステナブル社会の実現にどう貢献していくのか。今後も動向を注目していきたい。

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