はたらくクルマ ダイムラーがけん引する世界初の大型EVトラック ダイムラーアーバンeトラック

究極のゼロエミッションカー(走行中に二酸化炭素をまったく排出しないクルマ)とされるのは燃料電池車だが、トラックにおいてはその前段階としてEV(=電気自動車)が注目されている。現在地(2023年3月)はどこまで進化したのか、2017年に発刊された記事を振り返っていこう。

       
ダイムラーがワールドプレミアとして2016年に発表したもうひとつのEVトラックが、アーバンeトラック(Urban eTruck)だ。

基本的には近距離都市間輸送用途に開発された3軸大型EVトラックで、フル充電時の航続距離は200kmが目標とされている。特徴的なのは、出力125kwのモーター2基がホイール・ハブの隣にレイアウトされ、これに電動リアアクスルを組み合わせることでドライブトレインを構成。モーターの出力はホイール・ハブにより減速されることで、11000Nmという強大な最大トルクを発揮する。また、減速時はモーターをジェネレーターとしてエネルギーを回収するシステムを備える。この回生システムは、一般的なエンジンリターダーのような補助ブレーキの役割も果たす。

搭載される総容量212kWhのリチウムイオンバッテリーは、3つにモジュール化されたうえでシャシーフレーム内にレイアウト。eCanterと同様に運行形態に応じてバッテリーモジュールの搭載数を変えることで、可能走行距離または積載量のどちらかかを選べる。アーバンeトラックの重量は、ディーゼル大型トラック比で約1.7t増。欧州委員会では、代替ドライブ装備トラックのGVW増加は最大1tまで認められるため、EV化による実際の積載量減(減トン)は700kgに抑えられることになる。こうした環境のためのGVW緩和の法整備は、国内でもぜひ実施してもらいたい。

キャブフェイスは、ディーゼルトラックのような開口部(エア取り入れ口)がない、フラッシュサーフィス化されたデザインが特徴的だ。これはディーゼルエンジンのように冷却の必要がないためだ。一般道の運航がメインになるだろが、フラッシュサーフェス化されたキャブデザインは空力性能も高いはず。また、ソフトで滑らかなキャブの面構成は、やさしく知的なイメージがあり都市内での運送業務にマッチしそうだ。

ダイムラーではアーバンeトラックを含めた大型EVトラックの実用化について、’20年代の量産化を予測。もちろん、バッテリーのコスト低減が今後の大きな課題になるが、アーバンeトラックは現在の仕様でも運行用途を絞れば十分に実用できそうで、早期の量産化を望みたいところだ。

→【画像4枚】外装と内装の各所説明など

掲載:トラックグラフィックス2017 2017年2月1日発行(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)
文:米田 茂 写真:編集部

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