ノスタルジックヒーロー 珍車秘宝館第2回。
今では当たり前のツインカムエンジンだが、1920年代にDOHCヘッドを持つ市販車を造っていたのがアルファ・ロメオ。その血統を受け継ぐアルファ1300ユニットとは!?
【アルファロメオ GT 1300 ジュニア Vol.3】
【2】から続く「これだけのスペックで、なぜか高回転時の耐久性がイマイチなんです。よく聞くのは、8000rpm以上が苦手で、常時8000rpmでいくと、親メタルにトラブルが起きたり、ヘッドガスケットが抜けたり、ナゼ? と思える症状が出るそうです。そのあたりを解明すると、どうやらカギはブロック回りにありました」と楽しそうに語る珍車秘宝館館長。なんでも、バラしたブロックをストーブで暖めてみたところ、とんでもない事実が判明したそうだ。
このアルファ1300エンジンは、アルミブロックに筒状のライナーが4本入る。もちろんライナーは鋳鉄製だ。冷間時はライナーがブロック上面より0.08mmほど飛び出した状態だ。これを60℃に暖めたところ、ブロック高が0.33mmアップ。一方の鋳鉄ライナーは90℃に温めても0.08mmしか伸びない。これではエンジンの温度が上がると、ブロックがヘッドを押し上げ、ライナーが中で躍ってしまう状態になり、気密性が保てなくなる。
さらに、クランクキャップがアルミ鍛造製というのも問題。アルミ鋳造に比べ、素材の組織が詰まっている分、膨張率が高いのだ。そのため、60℃の時点でジャーナル径が0.06mmも広がった。これでは油膜が保てず、クランクやメタルにトラブルが起きるはずだ。
「素材や加工技術、いろんな面で先取りしすぎたエンジン、時代が早すぎたかな!?」と館長。原因が判明したので、OH時には当然、対策を施したそうだ。
>>【画像17枚】ガラスビーズでブラストを施し、新品のように仕上がった。ヘッド、ブロック、オイルパンまでアルミ製で、ため息が出るほど美しいアルファ1300ユニットなどブロックの高さを計測し、ストーブのそばに置いて暖め中。
約60℃になったところで計測すると、ブロックの高さが0.33mmアップ! 一方の鋳鉄製ライナーは90℃で0.08mm伸びた。この状況から、エンジンが熱くなる(高回転まで回す)と、ライナーよりブロックのほうが伸び、ヘッドを押し上げるという現象が起き、ヘッドとライナーの気密性が保てなくなる。
館長もビックリしたというアルミ鍛造製のクランクキャップ。暖めるとジャーナル径が0.06mmも大きくなるので、禁断の合い面加工を施し、運転状態でジャーナルが真円になるように調整。これでメタルのトラブルも解決。
初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 12月号 Vol.178(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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