白洲次郎が愛したベントレー【後編】80年の時を経て日本上陸を果たした赤いウイングドBの高性能モデル|1924年式 ベントレー 3リッター スピードモデル

ボディは新車時のバンデン・プラ製ツアラーではなく、1960年代に行われたレストアで、いわゆる「ル・マン」ボディとなっている。最高速度は約130km/hを誇った高性能モデルだった

       
【欧州名車列伝|1924年式 ベントレー 3リッター スピードモデル 後編】
【前編】から続く

先の大戦での敗戦で壊滅状態にあった日本を、独立国家としての尊厳を保ち戦後の飛躍的な復興の基盤を作った功労者の一人とされる白洲次郎。
彼がイギリス留学時代に乗っていた、ベントレー3リッター・スピードモデル。
その歴史的にも貴重な個体が、2004年春に日本上陸を果たし、この個体はワクイミュージアムの象徴となっている。

高性能仕様の証しとなる赤いウイングドBを配したモデルで、まさにビンテージ・スポーツカーの名車といえるものだ。

【画像13枚】複葉機時代の戦闘機を思わせる、スパルタンな設定のダッシュパネル。滑り止めのために麻縄を巻いたステアリングは、ビンテージ期のスポーツカーのシンボルともいえるものだ。この個体は3リッターでも最終期に属する1台なので、フロントにもブレーキを装着。タイヤも、やや太めのものが組み合わせられている

1924年式ベントレー3リッター・スピードモデルが日本に上陸したのは、白洲次郎の帰国から76年を経た2004年のこと。
購入者は、埼玉県加須市にあるワクイミュージアムの館長、涌井清春さん。
涌井さんは購入に際して、日本を代表するモータージャーナリストだった故・小林彰太郎さんから「このベントレーは日本にあるべき……」というアドバイスに、使命感を持って英国の前オーナーと交渉をスタート。
その強い思いによって日本に持ち帰ることを果たしたという逸話が残っている。

ワクイミュージアムにはこの白洲次郎のベントレーのほかにも、葉巻とスコッチウイスキーとともに吉田茂のシンボルとなった、ロールス・ロイス25/30HP。あるいはロールス・ロイスの名声を絶対的なものとした、名車ロールス・ロイス シルバーゴーストが3台。
ベントレーの開祖、W・O・ベントレーが自ら設計した時代のビンテージ・ベントレーも3台。
そして戦後ベントレーの最高傑作と称賛されるRタイプ・コンチネンタルとその後継モデルなども常時展示。規模こそ大きくはないが、世界に冠たる「ロールス・ロイス/ベントレーの殿堂」と評されているのだ。


>>エンジンは水冷直列4気筒SOHCで、1気筒あたり4バルブの軽合金ヘッドなど、当時の最先端メカニズムが満載されていた。スピードモデルは、ツインキャブ化などのチューニングが施され、スタンダードから15psアップの80~85psをマークした。


>>シートバックのみ湾曲し、腰部のサポート性を高める設定のシート。レストアから半世紀以上を経ているため、表皮は劣化のある状態。



>>ワクイミュージアムにはベントレーの開祖、W.O.ベントレーが自らが開発した時代の珠玉のモデルたちが収蔵される。。オリジナルボディのまま現存する最古の3リッターや、「Old Mother Gun」の愛称で知られる1928年のル・マン24時間レース優勝車。英国ビンテージカーの頂点とされる4 1/2リッターブロワーなど、どれも一見の価値あるベントレーなのだ。

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初出:ノスタルジックヒーロー 2020年10月号 Vol.201
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1924年式 ベントレー 3リッター スピードモデル(全2記事)

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ext:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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