前輪はどこでしょう。「リーガル」「ロビン」の後継車、ハチマル・生きる化石|1987年式 リライアント リアルト Vol.1

唯一フロント「ウイング(フェンダーの英国式表記)」にタイヤハウスがないことで、極めて個性的に映る。

       
世界的にも極めてレアな、フロント1輪式の3輪乗用車。その代表格がリライアント。
税制などの関係で3輪車が高い人気を得た英国では、今なおカルト的な評価を得ている。
そしてリライアント3輪車のハチマル時代を代表するのが、このリアルトである。

【1987年式 リライアント リアルト Vol.1】

 いかに博識な本誌読者諸賢とて、この3輪車をご存知の向きは少なかろう。もし何か連想するものがあるとすれば英国の大ヒットコメディ「Mr.ビーン」にて、主人公の乗るミニに煽られて毎度毎度の横転劇を演じる「やられキャラ」としての側面に違いない。しかしこのリライアントは、母国イギリスにおいては、格別の愛情とともに支持されてきたブランドなのだ。

 英国では免許制度や税制の優遇措置がとられていたため、第二次大戦前から3輪乗用車が大衆車として確たる地位を占めていた。その代表的メーカーが、FRP成型を得意としたリライアント。そしてその地位を決定づけたのが、1953年に登場した「リーガル」。および後継車として1973年秋にデビューした「ロビン」だった。

 キャビンを、マツダ初代キャロルのような「クリフカット」スタイルとされた「リーガル」。一方、60〜70年代に英国で活躍した工業デザイン会社「オーグル・デザイン」のトム・カレン代表が手掛けた、可愛らしくも合理的なデザインの「ロビン」と、内外装のスタイルこそ時代に応じて変化していたが、その中身はほぼ同一のもの。

 ホイールベースやトレッド(もちろんリアのみ)は若干延長されたが、ラダー型セパレートフレームのレイアウトなどは酷似しており、フロントがリーディングアーム+コイルによる独立懸架、リアは半楕円リーフで吊られたリジッドとなるサスペンションも事実上同じものであった。



 一方、意外にもモダンに感じられるヘッド・ブロックとも軽合金製のエンジンは、リライアント社自製の水冷直列4気筒OHV。リーガル時代に600ccから700ccに進化したのち、ロビンでは若干ボアを拡げた750ccを搭載。さらに1975年秋以降には850ccに拡大された。こうしてリーガルからロビンへと受け継がれてきたメカニズムは、ハチマル時代にあとを継いだ後継モデル、今回の主役である「リアルト」にも継承されることになるのだ。


>>【画像12枚】横開き式となる荷室ドアなど。このドアを一般的なハッチゲート式としたのが、2代目「ロビン」である



フロントグリルに装着される社名エンブレム





テールランプは恐らく汎用品?


1987年式 リライアント リアルト(Reliant Rialto)
SPECIFICATIONS 諸元
全長×全幅×全高(mm) 3378×1448×1397
ホイールベース(mm) 2159
トレッド(mm) 1245(後)
最低地上高(mm) 127
車両重量(kg) 436
エンジン種類 直列2気筒OHV
総排気量(cc) 848
最高出力(ps / rpm) 39.5 / 5500
最大トルク(kg-m / rpm) 6.3 / 3500
圧縮比 9.5:1
変速 機 4速 MT
ステアリング形式 ウォーム&ペグ
ホイールサイズ 3 1 / 2 × 10インチ
タイヤサイズ 5.20 × 10インチ


【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2015年 11月号 vol.32
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1987年式 リライアント リアルト(全3記事)

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text : HIROMI TAKEDA/武田公実 photo : JUN-ICHI OKUMURA/奥村純一

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