端正な小型ボディにV型6気筒ツインターボを擁するセダン。1990年代を見据えた小さな高級車【1】1987年式 マセラティ 430

Cピラーにセットされる三叉の矛のマセラティの紋

       
イタリアの名門マセラティが、1980年代に向けて送り出した「ビトゥルボ」シリーズに設定された4ドアベルリーナの第二幕。
長らくシリーズ全体がマセラティの「黒歴史」とも言われつつ、昨今では急速に評価を高めているビトゥルボ系の一つである。

【 1987年式 マセラティ 430 Vol.1】

 1981年にデビューしたマセラティ初の小型クーペ「ビトゥルボ」。そのホイールベースを86mm延長し、リアドアも与えた4ドア版「ビトゥルボ425」は、1983年12月14日に誕生した。「425」の「4」は4ドア。「25」は、2.5LのV型6気筒ツインターボを搭載することを意味していた。また初期型ビトゥルボ・クーペを特徴づけていた四角いダッシュパネルは、アーチ型の新デザインに刷新。のちにマセラティの象徴となるラグビーボール型の時計と、イタリアの高級ニットブランド、ミッソーニ社製のシート生地も採用していた。

 そして1987年、ビトゥルボ425に大規模なマイナーチェンジが施され、1990年代のマセラティの方向性を示したニューモデル、430へと進化を遂げることになった。

 新生430では「ビトゥルボ」の名は廃されたものの、エンジンはもちろん気筒当たり3バルブのSOHCヘッドを持つV型6気筒ツインターボ。1984年に先行デビューしていた、ビトゥルボよりも若干大柄なクーペ「228」で初採用された2790ccへとスケールアップされ、日本仕様では225psのパワーと37.0kg‐mのトルクをマークする。

 これは、ほぼ同じ時代に作られていたBMW735やメルセデス・ベンツ500SELにも匹敵するもので、二回りも小さなサルーンとしては望外の高性能エンジンだった。

 またドライブトレーンにも改良の手が加えられ、日本仕様車に組み合わされるオートマチックトランスミッションは、425以前の前進3速から4速にグレードアップ。デファレンシャルも従来の「センシトルク」から、より高効率で信頼性も高いと標榜する「レンジャーデフ」へと変更された。


>> 【画像15枚】これもマセラティの象徴たるラグビーボール型クロックの下には、ハチマル車らしいメンブレン(膜式)スイッチが並ぶ。




>> 曲面的でかさの高いクルマが当たり前となった現代の目で見ると、鋭くて低いノーズが驚くほどスタイリッシュに感じられる。グリルの意匠も高貴というほかない。





>> 野太いサウンドを聞かせるマフラーは左右4本出し。生粋のスーパーカーメーカーの作品であることをうかがわせる。







1987年式 マセラティ 430


SPECIFICATIONS 諸元
●全長×全幅×全高(mm) 4430×1730×1360
●ホイールベース(mm) 2600
●トレッド(mm) 1440/1450(前/後)
●車両重量(kg) 1340
●エンジン種類 V型6気筒SOHCツインターボ
●総排気量(cc) 2789
●ボア×ストローク(mm) 94.0×67.0
●最高出力(ps/rpm) 225/5500
●最大トルク(kg-m/rpm) 37/3500
●サスペンション 前ストラット/後トレーリングアーム
●ブレーキ 前ベンチレーテッドディスク/後ディスク
●タイヤサイズ 前205/55VR15/後205/50VR15

【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年 7月号 vol.36
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1987年式 マセラティ 430(全3記事)

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text : HIROMI TAKEDA/武田公実 photo : MOTOSUKE FUJII/藤井元輔

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