4駆ターボのGTS-4をベースとし、あえて4速ATのみとしたその理由|1992年式 日産 スカイライン オーテックバージョン【2】

専用カラーで塗装されたヘッドカバーには、R32の開発主管・伊藤修令さん、実験部の中島繁治さん、デザイナーの西泉秀俊さんのサインが書かれている

【R32スカイラインという存在  1992年式 日産 スカイライン オーテックバージョン vol.2】

【1】から続く

 R32スカイラインのオーテックバージョン、サスペンションも専用にチューニングし、低中速域はもとより、高速でのコーナリング性能とマイルドな乗り心地を高次元で両立。ただ単にハードにしただけではない、優れた安定感と安心感を持つサスペンションに仕立てられた。加えて、GT-Rと同サイズのブレーキキャリパー&ローターを装備。「走る、曲がる、止まる」というクルマの基本性能を、すべてにおいてレベルアップさせたのである。
 ただし、このオーテックバージョンのトランスミッションは4速ATのみ。しかしなぜ、ベース車にある5速MTが未設定なのか。それは、スポーツカーではなくGTカーだから。オーテックバージョンは、「市街地走行からスポーツ走行まで安全で楽しい高質な走りを実現すること」をテーマに開発された。それゆえ、優れた走行性能を第一条件にしつつも、長距離走行でストレスを感じず、ドライバーの疲労を軽減する4速ATが選ばれたというわけだ。また、運動性能だけを追求したハードなサスペンションや、快適性とトレードオフした窮屈なバケットシートなどを採用しなかったことも、この開発テーマを知れば納得できることだろう。
 ちなみにR31オーテックバージョンは200台限定だったが、R32はカタログモデルとしてラインナップ。しかし、GT-Rの存在や高価なことが影響して販売台数は伸び悩んだため、いまでは希少な1台となっている。


【画像16枚】メーターはGT-Rではなく、GTS-4と同じ。そのため、白針の水平指針だ。左上に配置される小径のフロントトルクメーターが、GTS-4ベースを物語っている。ミッションは電子制御4速ATのみ。ただし、RB26DE型搭載にあたって専用セッティングが施されている

ボディカラーは専用色のイエロイッシュグリーンパールメタリック。ハイマウントストップランプ付きリアスポイラーはディーラーオプションだった。
>>ボディカラーは専用色のイエロイッシュグリーンパールメタリック。ハイマウントストップランプ付きリアスポイラーはディーラーオプションだった。



マフラーのテールパイプに装着されているのはオプションで用意されていたエキゾーストフィニッシャー。これもレアなアイテムだそうだ。
>>マフラーのテールパイプに装着されているのはオプションで用意されていたエキゾーストフィニッシャー。これもレアなアイテムだそうだ。



スカイライン オーテックバージョン(HNR32改)

全長×全幅×全高(㎜) 4580×1695×1360
ホイールベース(㎜)  2615
トレッド(㎜) 1465(前後とも)
車両重量(㎏)  1480
エンジン型式  RB26DE型
エンジン種類 直列6気筒DOHC
総排気量(cc) 2568
ボア×ストローク(㎜) 86.0×73.7
圧縮比10.5:1
最高出力(ps/rpm) 220/6800
最大トルク(㎏-m/rpm) 25.0/5200
変速比 1速2.785/2速1.545/3速1.000/
4速0.694/後退2.272
最終減速比 4.375
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション マルチリンク(前後とも)
ブレーキ ベンチレーテッドディスク(前後とも)
タイヤ 205/55R16(前後とも)
発売当時価格 418.8万円


【3】へ続く


初出:ハチマルヒーロー2017年1月号 vol.39
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1992年式 日産 スカイライン オーテックバージョン(全3記事)

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TEXT : Rino Creative/リノクリエイティブ PHOTO : SATOSHI KAMIMURA/神村 聖

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