「みんなと仲良くしないとダメですね」新天地での生活に苦労しながら家族とRX-3と暮らすオーナー|Mazda RX-3SP【3】

「すべてがオリジナルというわけではないけれど、改造は「ピリオド」でやっています」とのこと。ピリオド(適時代性)がキーワードだ

【2】から続く

当時の夢のエンジン「ロータリーエンジン」を搭載したクルマは数多く登場した。中でもオーナーが所有しているRX-3は次期モデルに切り替えるための残余部品の処分のためと考える人もいた。

【アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第51回 カリフォルニアの青空の下を駆けるマツダ・ロータリー vol.2】

都心から離れてRX-3と暮らす

3年前、レーバーさんは心臓を患い、大手術を受けた。フリーモント市で自営業を営んでいたレーバーさんは手術のあと、日々のストレスを少しでも和らげることを考え、都会を離れて奥さんの出身地だったソノラへと家族で移ったのだった。

「電気工事の商売をしています。住宅や商業施設が多いですが、昔はDJなんかもやっていたから、今でも音楽スタジオの電設もやってますよ」

 だからクルマの配線取り回しなどお手のもの。併せて機械工作や溶接までできる。どれもクルマを維持するため。修理作業を何でも自分でやるのだ。

「機械工作や溶接は独学ですけどね。仕事のお客さんは今でもサンフランシスコ方面が多いので、平日は家族をおいて連泊で行くこともあります。だんだんと、今の地元での仕事を増やしていこうと思っています」

 自営業だったことは都会を離れる際にも都合がよかった。地元に溶け込むことが大事だと感じたのは、引っ越したばかりのソノラでこんな出来事を目の当たりにしたからだ。

「私はお酒を飲まないのですが、地ビールの店を開こうとした人が開店直前までこぎつけたところで、ひょんなことで商工会の人と喧嘩して反発にあって、店を開けなくなった。みんなと仲良くしないとダメですね、ことに小さな町では」

 この町ではよく目立つRX-3。気軽に走らせるのにためらいはない。

「RX-3で娘を小学校まで迎えに行ったりします。娘は喜んでますよ。趣味に関して家内は自由にさせてくれます。ソファに寝転がってテレビを見てるよりはいいじゃない、とでも思っているんでしょう」

 自宅の中にもパーツが保管してあり、インテリアにもなっている。パーツを入手する機会に出くわせば、ためらいなく手に入れておくそうだ。

「マツダのファンはコミュニティがいいと感じています。世界中の人達とパーツなんかをお互い融通しあうんです。ただ、LA(ロサンゼルス)の連中はなぜか雰囲気がちょっと違うけれど」

 LAで毎年開催されるJCCSなどの有名なショーには遠方から泊まりがけで参加する人も増えている。参加者の増加に伴い、会場付近では車両の盗難も起こるようになっているという。そんな心ない人達を尻目に、心底ニッポン旧車を愛する人たちは、距離を超えて本当の友情を築き続けている。

【画像13枚】オーナーの自宅やガレージの様子など。電気工事を生業としているのでクルマ以外の部品や工具も多く見受けられる。「自宅の地下にはパーツをたくさんおいてある」というオーナーの自宅半地下のゲストルーム。宙を見つめるようなRX-3のフロントマスクがどこか奇妙にも感じられた。もちろんこの部屋だけでなく、押し入れや物置にもさまざまなパーツが保管されていた




>>狭い町の外へ出てしまえば緑が広がる土地柄。クルマをのびのびと走らせる場所にはこと欠かない。青色系のクルマが増えた最近でもソリッドブルーは特に目を引く色だ。それに合わせて黒のトリムでまとめた外観のSPは、自然の緑とは実に対照的。その姿はサーキットのほうが似合うかもしれない。




【1】【2】から続く。 アメリカ発!ニッポン旧車の楽しみ方 第51回(全3記事)

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年10月号 Vol.195

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


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