「当時の姿を忠実に再現し、オリジナルに戻してゆく」間違いなどを指摘してくれるユーザーも|スペシャルインタビュー 石川 亨 ×中尾 博【3】

フロントグリルが欠品していたが、3Dプリンターで再生。メッキ処理し見た目は分からないが、樹脂でできている。パーツ再生もメーカーならでは。

いすゞ自動車では、かつて生産していたクルマをレストアして、モーターショーや企画展で展示を行なっている。トラック専門メーカーとして生まれ変わった現在でも、古いクルマを大切にしているその目的は何か。その経緯と現在の活動について、詳しく調べてみた。

【スペシャルインタビュー 石川 亨(いすゞ自動車 試作部 部長)× 中尾 博(いすゞプラザ 副館長代理) vol.3】

これまでのクルマのラインナップはモーターショーや各企画展に合わせて準備されてきた経緯がある。その都度、時代ごとのエポックメイキングなクルマが集められて、レストアが行われた。その際、メーカーとしてのこだわりを持って作業に取り組んできたという。

「ただレストアをするだけでなく、いすゞ自動車というメーカーとしてのレストアを意識してきました。曲がる止まるは基本のことで、当時の姿を忠実に再現し、オリジナルに戻すことに努めています。そして、会社としてレストアを行っている事業ですので、例えば試作部の3Dプリンターでパーツを作ったり、社内の資料を駆使して、その時代に適合した正しい姿を追求するなど、メーカーだからできるレストアを行っています」と中尾さん。

いすゞプラザがオープンしてから、ユーザーとのつながりも多くなった。展示車両について資料を持ってきてくれたり、間違いなどを指摘してくれるユーザーもいるという。社内では完璧だと思いレストアを進めていても、その1台ごとのクルマについて深い知識があるかというと、不安を感じるところもある。そんな時、クルマをよく知るマニアからの助言に助けられてきた。

2019年現在、クルマの在庫は31台。企画展などに合わせて、このクルマを数台ずつ展示する予定だ。在庫しているクルマを増やすことは積極的には行っていない。企画展で不足した車両を追加する程度にとどめているという。実際、ユーザーから提供の問い合わせも多いが、すべてには対応できない状態だ。

現在、いすゞ自動車は乗用車を扱っていないが、いろいろな部署に協力を依頼すると快く引き受けてくれたという。みんなでクルマをレストアしている感覚だ。クルマが完成すると、手伝ったスタッフが完成車の見学を楽しみにしているという。なんとも、いすゞ自動車らしい光景と言えるだろう。

 レストア事業で完成したクルマは、いすゞ自動車を深く知り、さらに、今のいすゞ自動車を説明するうえでの大切な材料となることは間違いない。

【画像13枚】クルマをよく知るマニアからの助言にも助けられてきたレストア事業



中尾 博(なかお ひろし)

いすゞ自動車のデザイン部出身で、現在はいすゞプラザ副館長代理を務める。レストア事業をスタートさせた当初、石川さんとともに苦労しながらクルマをつくっていたうちの1人。


【1】【2】から続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年6月号 vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

スペシャルインタビュー 石川 亨×中尾 博(全3記事)

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text:Keishi Watanabe/渡辺圭史 Photo:Isuzu Motors/いすゞ自動車

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