マイクロフィルムで品番をチェックし、3Dプリンターでパーツを再現|スペシャルインタビュー 石川 亨 ×中尾 博【2】

レストアの記録は冊子にされており、社員の研修用に配られている。クルマの再生、その歴史などを学べる貴重な資料となる

いすゞ自動車では、かつて生産していたクルマをレストアして、モーターショーや企画展で展示を行なっている。トラック専門メーカーとして生まれ変わった現在でも、古いクルマを大切にしているその目的は何か。その経緯と現在の活動について、詳しく調べてみた。

【スペシャルインタビュー 石川 亨(いすゞ自動車 試作部 部長)× 中尾 博(いすゞプラザ 副館長代理) vol.2】

そして、作業を進めていく上で問題となったのが、ボディカラー。当時の写真は白黒で実際の色が分からないことが多かった。そこでNHKのアーカイブス映像を探すなどして、当時の色の情報を探した。ボディに塗料が残っていれば、色をスキャンしてカラー調合を行なった。最終的には白黒の写真を見ながら、当時の色味を判断して、感覚で決める部分も多かったという。

資料は少なかったが、パーツなどの図面はしっかりと残っていた。

「古いクルマなので出てこないと思いましたが、図面を管理している部署に聞いてみると、古いクルマでも図面をマイクロフィルムに保管しているというんです。そして、パーツの品番で検索をしてみると、図面が出てきました。その数値を元に3Dプリンターでパーツを再現できたのは助かりました」

パーツ探しも地道に進められ、海外のオークションサイトなどで入手することもあったという。スミダの電子ホーンやワイパーなどは、海外でパーツが出てきたというから驚きだ。もちろんヒルマンなどは英国でのマニアも多く、パーツが流通しているので、比較的入手し易い状態にあった。

2015年からはいすゞプラザオープンに向けて展示車両を準備することになり、レストア事業は活発になってきた。そして、いすゞプラザは2017年にオープン。ある程度のクルマがそろった2018年にレストア活動は一旦休止となった。しかし、いすゞプラザのオープンにより、古いクルマの役割が変わっただけであり、その重要性は変わらない。これまでの技能伝承による教育という側面から、広報活動、社会貢献活動へとつながる事業へと姿を変えていっただけなのだ。

【画像13枚】資料は少なかったが、パーツの図面はしっかりと残されていた、いすゞプラザオープンに向け、レストア事業も活発に!



石川 亨(いしかわ とおる)

1981年いすゞ自動車に入社。試作部に所属し、会社のレストア事業の黎明期から携わっている。現在はレストア事業のリーダーとして、今後の事業展開の取りまとめなどを担当。


【3】へ続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2019年6月号 vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

スペシャルインタビュー 石川 亨×中尾 博(全3記事)

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text:Keishi Watanabe/渡辺圭史 Photo:Isuzu Motors/いすゞ自動車

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