ロータリー・ファミリー。最初のメンバー8社に名を連ねた東洋工業|唯一無二の究極エンジン ロータリー物語【1】

エンジンの回転運動をそのまま駆動力へとつなげるロータリーエンジン。上下動のピストン運動と違い、パワーロスが少ない夢のエンジンだ

       
エンジンの回転運動をそのまま駆動力へとつなげるロータリーエンジン。上下動のピストン運動と違い、パワーロスが少ない夢のエンジンだ。しかし、その実用化には高く困難な壁があり、多くの研究者を跳ね返した。そんなロータリーエンジンの誕生から実用化までを振り返っていこう。そしてロータリーエンジンの未来に光はあるのだろうか。

【唯一無二の究極エンジン ロータリー物語 vol.1】

 レシプロエンジンはピストンの往復運動によって動力を発生する。これに対し、回転運動によって動的なエネルギーを発生するのがロータリーエンジンだ。その歴史は古く、1588年にイタリアのラメールがロータリーピストン式の揚水ポンプを発明している。それ以降も世界中のエンジニアが夢のロータリーエンジンの実用化に情熱を傾けた。が、気密性を保持することや潤滑に問題を抱えていたため失敗に終わっている。

 今につながるロータリーエンジンが発明され、注目を集めるのは第二次世界大戦後だ。西ドイツのフェリックス・ヴァンケル博士が、まゆ形をしたケースの中を三角形のおむすび状のローターが回転するロータリーエンジンのアイデアと理論を発表。そして51年に、このアイデアをNSU社(現在はアウディグループの一員)に持ち込み、NSU社は資金面と技術的な援助を行うことを決定した。

 それから8年後の59年12月9日、NSU社が「革新的なロータリーエンジンの共同開発に成功した」と大々的に発表。この衝撃的なニュースに、多くの自動車メーカーや二輪車メーカーは沸き立ち、NSU社には技術提携の問い合わせが殺到。その数は100社を大きく超えたと言われている。

 最初のロータリー・ファミリーのメンバーは8社となった。西ドイツが5社を占めたが、日本では東洋工業(以下マツダ)とヤンマー・ディーゼルが提携を結んでいる。その後、スズキや日産などもパートナーに名を連ねた。

【画像37枚】「夢のエンジン」とも呼べるロータリーエンジンだが、その実用化へのハードルは高く、多くの研究者を跳ね返してきた


>>ハウジングのなかを三角形のおむすび状のローターが回転することで動力を生むロータリーエンジン。実用化には「悪魔の爪痕」を乗り越える必要があった。



>>ロータリーエンジンに挑んだマツダの歴史


【2】へ続く

初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

唯一無二の究極エンジン ロータリー物語(全3記事)

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text: Hideaki Kataoka/ 片岡英明

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