唯一のロータリーメーカーとして新境地を切り開いてきたマツダ。最新ロータリー8C-PH型とともに、新たな歴史にも注目だ!|唯一無二の究極エンジン ロータリー物語【3】

91年のル・マン24時間レースを制したマツダの787B。日本メーカー初の偉業を成し遂げた。搭載するエンジンはR26B型と呼ばれる4ローターのレーシングエンジンで、最高出力700psを誇った

       
エンジンの回転運動をそのまま駆動力へとつなげるロータリーエンジン。上下動のピストン運動と違い、パワーロスが少ない夢のエンジンだ。しかし、その実用化には高く困難な壁があり、多くの研究者を跳ね返した。そんなロータリーエンジンの誕生から実用化までを振り返っていこう。そしてロータリーエンジンの未来に光はあるのだろうか。

【唯一無二の究極エンジン ロータリー物語 vol.3】

 順風満帆に見えたマツダだが、この直後にオイルショックに見舞われ、ロータリーエンジンはガスイーターのレッテルを貼られてしまう。しかし、マツダの情熱は消えず、執念で燃費を向上させた。70年代半ばからは、サーマルリアクターを使ったREAPSでクリーンなロータリーエンジンをアピール。この頃には、ロータリーエンジンを生産しているのは同社だけとなっていた。

 唯一のロータリーメーカーとして、78年春に発表したサバンナRX-7で新境地を切り開いた。83年9月には世界初のロータリーターボも送り出す。ロータリーは過給機との相性が良く、緻密な燃料供給を行う電子制御燃料噴射装置を採用したこともあり、12A型ロータリーターボは驚くほどパワフルだった。そして、85年秋にモデルチェンジした2代目RX-7(FC3S)では13B型ロータリーへと進化。ターボも可変式のツインスクロールターボになったからパワーとトルクが一気に盛り上がって刺激的な走りを実現した。

 マツダは早い時期からマルチロータリーに注目し、レースでは3ローターと4ローターのロータリーエンジンを使っていた。このノウハウを注ぎ込んで開発されたのが、3ローター・ロータリーの20B型だ。単室容積654ccの13B型を3ローター化し、燃料噴射にも工夫を凝らしている。モータースポーツの世界でもマルチロータリーエンジンは大暴れした。91年、マツダ787Bが日本の自動車メーカーの作品として初めてル・マン24時間レースの覇者となっている。

 21世紀を前に、マツダ以外の自動車メーカーはロータリーエンジンの表舞台から去った。が、ロータリーエンジンの育ての親であるマツダは、夢を捨てない。2003年春にRX-7の後継車RX-8を発売。RX-8は4シーターのピュアスポーツカーだ。ユニークな4ドアの観音開きドアを採用し、エンジンは可変吸気システムを採用した自然吸気方式の13B‐MSP型ロータリーを積む。

 RX-8でロータリーエンジンの実力を再認識させたマツダは、15年秋の第44回東京モーターショーでRX‐VISONをお披露目した。これは次世代ロータリーであるSKYACTIV‐Rを搭載したロータリースポーツのコンセプトカーだ。マツダは17年にロータリーエンジン発売50周年を迎え、20年には創業100年を迎える。遠くないうちに、ロータリーエンジンの歴史に新たな1ページが加えられるはずだ。楽しみに待ちたい。

【画像37枚】ロータリーエンジンの育ての親であるマツダ。これからどんな歴史が加わっていくのか注目だ


>>91年のル・マン24時間レースを制したマツダの787B。日本メーカー初の偉業を成し遂げた。搭載するエンジンはR26B型と呼ばれる4ローターのレーシングエンジンで、最高出力700psを誇った。


>>2015年の東京モーターショーでワールドプレミアされたRX-VISION。次世代ロータリーエンジンを搭載するコンセプトカーで、次期RX登場に期待が高まった。


>>2007年の東京モーターショーで次世代ロータリーエンジンとして発表された16X型。水素ロータリーで、排気量は800cc×2。それを搭載したコンセプトカーが右の「大気」だった。そのマルチフューエルなロータリーエンジンの正確にも注目が集まった。



【1】【2】から続く


初出:ハチマルヒーロー 2016年11月号 Vol.38
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

唯一無二の究極エンジン ロータリー物語(全3記事)

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text: Hideaki Kataoka/ 片岡英明

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