フランス車とイタリア車の美点を両立させた珍しい一台!|1973年式 シムカ 1000 GLS【3】

ボディデザインにたがわず、スクエア&シンプルなダッシュパネル。ステアリング右上の後付けメーターは、ノーマルでは装備のない回転計。

       
【1】【2】から続く

かつて五木寛之が著したオムニバス小説「雨の日にはクルマを磨いて」において、その冒頭から登場するシムカ1000は、1960〜70年代のフランスを代表する小型ベルリーヌのひとつ。しかし、イタリアのDNAを大きく受け継いだモデルでもある。

【ハチマルユーロー 1973年式 シムカ 1000 GLS vol.3】

 今回撮影したシムカ1000は、65年に追加された高級版の「GLS」。1000シリーズのモデル末期に当たる73年に、クライスラー・フランス傘下のシムカで生産された一台である。また、前オーナーの好みで、イタリアのアバルト風モディファイが施されている。

 60年代にアバルトとのコラボでレーシングGTの「アバルト・シムカ」を製作したほか、実はシムカ1000をベースとするチューンドカー「シムカ・アバルト1150」もごく一時期ながら製作された歴史が示すように、シムカ1000とアバルトは相性が良いようだ。

 72年モデルから排気量を1118ccに拡大されたエンジンは、この時代に世界的人気を博した「アバルトマフラー」も相まって、けっこうトルクフル。快音を聴かせつつ、現代の交通の流れを難なくリードできる。

 もちろんノンパワーのステアリングは極めて自然に軽く、ハンドリングは同時代のスポーツカーに近いもの。その一方で、ソファのごとく柔らかいシートのおかげか乗り心地も優れているのは、さすがフランス車。つまりシムカ1000は、その出自が示すとおりフランス車とイタリア車の美点を両立させた珍しい一台なのである。

【画像13枚】今回撮影したシムカ1000は高級グレードの「GLS」となっている。前オーナーの好みでイタリアのアバルト風モディファイがされているのも印象的な一台だ



>>たっぷりとした形状で、しかもソフトなフロントシートは快適至極な乗り心地にも大きく貢献している。


>>豪華なベロア張りのシートは、まるでソファのような掛け心地。後席のニースペースにも不足はなく、4人の大人が快適に移動できるだろう。


>>「シムカ(SIMCA)」は、イタリア人実業家アンリ・テオドル・ピゴッツィが興した自動車メーカーである。



1973年式 SIMCA 1000 GLS

全長×全幅×全高3940×1600×1460mm
ホイールベース2520mm
トレッド前/後1371/1314mm
車両重量890kg
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量1118cc
最高出力54/6000ps/rpm
最大トルク8.2/3200㎏-m/rpm 
ボア&ストローク74.0×65.0mm
圧縮比 8.2:1
トランスミッション 4MT
サスペンション 前独立ウィッシュボーン/横置半楕円リーフ
後独立セミトレーリングアーム/コイル
タイヤサイズ 145SR13



【1】【2】から続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年12月号 Vol.190
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 シムカ 1000 GLS(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Jyunichi Okumura/奥村純一

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