フィアットのDNAを受け継ぐ小型ベルリーヌ|1973年式 シムカ 1000 GLS【1】

簡潔な四角い箱に丸型2灯ライトを配した表情が、なにやら独特の可愛らしさを感じさせるマスク。硬質な快音を発する2本出しの「アバルトマフラー」が突き出すテールエンドにも注目だ

       

かつて五木寛之が著したオムニバス小説「雨の日にはクルマを磨いて」において、その冒頭から登場するシムカ1000は、1960〜70年代のフランスを代表する小型ベルリーヌのひとつ。しかし、イタリアのDNAを大きく受け継いだモデルでもある。

【ハチマルユーロー 1973年式 シムカ 1000 GLS vol.1】

今や自身のブランドネームを失い、プジョーが指揮するPSAグループの一生産拠点となってしまった「シムカ(SIMCA)」は、イタリア人実業家アンリ・テオドル・ピゴッツィが興した自動車メーカーである。

ピゴッツィは1926年に故郷トリノを本拠とするフィアットのフランス代理権を獲得することに成功。さらに最終工程をフランスで組み付ければフランス車と見なされる、という法の抜け穴を発見した彼は、32年からフィアット508バリッラの国内生産を開始する。

成功を確信した「フィアット・フランス」は、工業都市ナンテールに大規模な工場を建設。34年にシムカとして第一歩を踏み出すことになった。

新生シムカは、イタリアでは「トッポリーノ」の愛称で知られたフィアット500を「シムカ5」、また上級のフィアット1100を「シムカ8」の名でノックダウン生産。特にシムカ8には、イタリア本国版には設定のないおしゃれなクーペ版も用意された。

【画像13枚】「フィアット・フランス」としてスタートしたシムカ。イタリア本国版にはない独自モデルも展開した


>>かつて五木寛之が著したオムニバス小説「雨の日にはクルマを磨いて」において、その冒頭から登場するシムカ1000は、1960〜70年代のフランスを代表する小型ベルリーヌのひとつ。しかし、イタリアのDNAを大きく受け継いだモデルでもある。


>>硬質な快音を発する2本出しの「アバルトマフラー」が突き出すテールエンド。


>>この個体は前オーナーの好みで、アウトビアンキA112アバルト用と同じデザインのカンパニョーロ社製アロイホイールに換装されている。



1973年式 SIMCA 1000 GLS

全長×全幅×全高3940×1600×1460mm
ホイールベース2520mm
トレッド前/後1371/1314mm
車両重量890kg
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量1118cc
最高出力54/6000ps/rpm
最大トルク8.2/3200㎏-m/rpm 
ボア&ストローク74.0×65.0mm
圧縮比 8.2:1
トランスミッション 4MT
サスペンション 前独立ウィッシュボーン/横置半楕円リーフ
後独立セミトレーリングアーム/コイル
タイヤサイズ 145SR13

【2】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1973年式 シムカ 1000 GLS(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Jyunichi Okumura/奥村純一

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