イシゴニス博士の奇策を解説!? イギリスを代表する小型大衆車のエンジンの妙|珍車秘宝館 第14回 【1】

エンジンの反対側で、キャブとタコ足を取り外した状態。丸と四角の穴が見えるが、丸が吸気ポート、四角が排気ポート。ヘッドの中で各シリンダーに向かって別れる構造だ

       
小型大衆車として40年以上も発売され続けたミニ。コンパクトな車体を実現するために、技術者のアレック・イシゴニスはエンジンの設計において、奇策を投じている。その発想がスゴイ!

【珍車秘宝館 第14回アレック・イシゴニスとミニとAシリーズエンジン vol.1】

1959年から2000年まで販売されたイギリスを代表する小型大衆車の「ミニ」。そのコンパクトなエンジンルームに納まるのは、水冷4気筒OHVのAシリーズエンジンだ。これを開発したのが、かの有名なアレック・イシゴニスさん。その功績をたたえられ、後にナイトの称号も与えられたそうだ。

「あの狭いエンジンルームに4気筒のエンジンとミッションを押し込むために、イシゴニス博士はいろいろと苦肉の策を、随所に講じているのが感じられます。目的としては、できるだけコンパクトにすることです。

とにかくエンジン前後方向(ミニは横置きエンジンなので左右方向か?)の長さを切り詰めるために工夫されています。4気筒エンジンの場合、通常のターンフローエンジンでは、当たり前ですが吸気4、排気4カ所のポートがあります。

ところが、ミニのポートは吸気2、排気3カ所になっています。ややこしいので、写真を見ながら説明すると、赤線が排気ポートの通路、青線が吸気ポートの通路で、なんとヘッドの中でポートを分けています! 3番、4番シリンダーの排気ポートはヘッドの中で交わって1カ所から抜く構造になっているのです。なので、この2気筒には排気脈動なんてあったもんじゃありません(笑)。

【画像10枚】イギリスを代表する小型大衆車であるミニのエンジンを開発したのしたのが、アレック・イシゴニス博士


>>オーバーホールのために降ろされたミニのエンジン。左右はコンパクトだが、ミッションをオイルパンの中に収めているため、全高はかなり高い。


>>ミニのヘッドは、1と2番、3と4番の吸気ポート、2と3番の排気ポートが共用で、1と4番の排気ポートは独立している。このような排気ポートのため、ミニのエキゾーストノートは特徴的だ。写真の赤丸印は、ヘッドボルドの位置だ。


>>ミニのシリンダーブロックで、ヘッドボルトが止まる位置に赤丸印をつけた。通常のエンジンは、1気筒に対して4本のヘッドボルトで締めているが、ミニは3本締め。各ポートがヘッド内部で分かれているため、ヘッドボルトの位置がないのだ。



【2】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

珍車秘宝館 第14回(全2記事)

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photo&text:珍車秘宝館 館長

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