「ルックイースト政策」により、日本を手本に工業化を目指した国。そのクルマ事情|マレーシア・ペナン島のニッポン旧車ミーティング【2】

先発隊は現地でバーベーキューの準備。マンション建設が盛んな郊外の道路に集合したのはデイトリップ参加者の第2グループ。メンバーが集まるのを待つ間オーナーたちは歩道でおしゃべりに興じる。同行家族の女性や子供たちはシャイなのか、クルマの中で静かに座っていた。外は蒸し暑く、旧車であってもクーラーは必需品だ。

       
【1】から続く

本連載(ノスタルジックヒーロー178号掲載)でも紹介したマレーシアのニッポン旧車事情だが、今回はさらにディープに、観光地としても知られる「東洋の真珠」ことペナン島での旧車ミーティングを取材した。近年では観光地としてだけではなく、エレクトロニクス産業の発展も著しいペナン島は、人口も車両の数も増加中だという。当然それに比例してニッポン旧車のファンも増えているようだ。

【ニッポン旧車の楽しみ方第45回 マレーシア・ペナン島のニッポン旧車ミーティング vol.2】

 マレーシアの自動車メーカーといえばプロトンとプロドゥア。1980年から「国産車構想」として工業化を推進したのが、「ルックイースト(東を見よ=日本に学ぼう)政策」を掲げたマハティール首相だった。日本の自動車メーカーから製造技術が導入された経緯は本連載の第34回(ノスタルジックヒーロー178号掲載)でリポートしたとおり。うまく工業化に成功したマレーシアは国全体が豊かになった。

 今日では日本の小型車と見紛うような新型車が街のあちこちを走っていて、小型車を得意とするプロドゥアがシェアを伸ばしているのが分かる。日本車や韓国車も増加気味だ。外国ブランドはやはり人気があり、ステータスがついて回る。

 マレーシアで外車が増えている理由の一つは、裕福な隣国シンガポールから中古車が入ってくること。狭い隣国ブルネイだけでなく、島国シンガポールでも10年以上たったクルマはスクラップにされる運命が待っている。

 シンガポールの人たちはスクラップを避け、中古車をマレーシアに輸出し始めたのだ。ちなみに金持ちブルネイの人たちはマレーシア国内に土地を所有し、そこにクラシックカーを保管しているというウワサ。これらの国と比較してみれば、古いクルマを大切にする文化のある日本やアメリカは幸い。大切にしたい文化だ。

 マレーシア国産車は国内では大きなシェアを占めているが、それは国産車優遇措置のため。国際競争力には劣るとされ、シンガポールや陸続きのタイにすら輸出されていない。輸出によって自国産業を伸ばしていきたいマレーシア政府にとって、頭の痛いところだ。アメリカではトランプ大統領が輸入車への高額関税を示唆するなど、世界の自動車産業に波風を立てている。

 これからさらなる工業化を目指すマレーシア。政治に戻ってきたマハティール首相はそんな難局に対し、再び日本を手本としてくれるだろうか。

【画像18枚】現地でバーベーキューの準備をするミーティング先発隊のニッポン旧車たちなど。マンション建設が盛んな郊外の道路に集合したのはデイトリップ参加者の第2グループ。メンバーが集まるのを待つ間オーナーたちは歩道でおしゃべりに興じる。同行家族の女性や子供たちはシャイなのか、クルマの中で静かに座っていた。外は蒸し暑く、旧車であってもクーラーは必需品だ


>>水浴場ではほとんどの人が服を着たまま入っていた。肌を露出することがはばかられるからのようだ。


>>森林公園でのマレーシア流バーベキュー。メニューは日本でも見かけるようなソーセージと黄色いスパイスに漬け込んだ骨つきチキン。辛味の効いた焼飯にはなぜか、日本の煮干に似た魚が入っていた。これを手で食べる。3本の指でつまむように食べるのにはなかなかコツが必要だ。お酒は誰も飲んでいなかった。

text&photo:Hisashi Masui/増井久志

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