15万8800kmを走ったトヨタ2000GT。人生の3分の1以上を共に「いずれ息子に譲ります。ただもう少し手元に置いておきたい」|1970年式 トヨタ2000GT(MF10)【3】

ゴージャスなウオールナット張り(前期は単板、後期は合板)のメーターパネルは、半世紀近くたった今も色あせていない。銘木店を営むオーナーにとって、トヨタ2000GTのコックピットは木の温もりや魅力を誇りに感じる最高の景色。

       
【2】から続く

1台目は後期型の1号車となるATモデル。そして2台目は桶谷博士に愛され、マツダコレクションに収蔵されたことのある由緒正しき1台。一度でも付き合うことができれば幸運なトヨタ2000GTと、二度も付き合う幸福なオーナーの旧車ライフを紹介しよう。

【1970年式 トヨタ2000GT(MF10)vol.3】

 銘木の目利きは、桶谷博士に愛され、マツダコレクションで保存されていたこの由緒正しきトヨタ2000GTを一目で「買い」と決めていたのだ。

 そして、その時の見立ては見事的中、人生2台目となるトヨタ2000GTは今も快調そのものだ。これまでの修理歴は、ボンネットやルーフの塗装、デフギアの取り替え、そして最近修理したクーラーくらいのもの。さすがに近ごろは特別な時にしか乗らなくなったが、しばらく前までは、クラシックカー保険の定款に規定されている年間走行距離を超えてしまうほど楽しんでいたらしい。

 そのため、現在、愛車の積算走行距離は、15万8800km。名車も銘木も、使い込むほどに味が出るといわんばかりの距離数だ。1台目が丸10年、この2台目に乗り換えて16年。一時はあきらめかけたこともあった夢のトヨタ2000GTと、既に人生の3分の1以上を共にしている。

「いずれ息子に譲ります。ただもう少し手元に置いておきたい。桶谷先生がいうように、このクルマは年齢が行くほど似合う気がするからです」

【画像22枚】リトラクタブルヘッドライトも快調に作動する。ボディはボンネットとルーフ、トランクの塗装のみ修復。その他に手を加えた部分はないという


>>最近のドライブはイベント参加がメーンで、遠方へも必ず自走。「2000GTを見るのを楽しみにしてくれる人がいる限り出かけます」と布引さん。


>>調子が悪かったクーラーは、修理で復活。布引さんも初代オーナーの桶谷博士と同様にクーラーは必需品と考える。



大学教授の桶谷繁雄工学博士が愛したシルバーのMF10


初代オーナーは、東京帝国大学(現東京大学)工学部卒業後に、東京工業大学や京都産業大学で教鞭をとった金属学者の桶谷繁雄工学博士だ。イタリア旅行中に出合ったフェラーリに乗る初老の紳士のオシャレさに感銘し、日本のスポーツカー「トヨタ2000GT」の購入を決意し、60歳を目前にしてオーナーに。田園調布の自宅と千駄ヶ谷の事務所の通勤、月に1度の京都産業大学への往復で、走行距離は購入から6年ほどで10万㎞。その後も大切に乗り続け、博士には最後の愛車となった。


>>ベレー帽にパイプが桶谷博士のトレードマークで、往年はトヨタ2000GTが加わった。ガレージ内には、桶谷博士の写真を飾っている。



OWNER’S VOICE/これで2台目の2000GTわれながら幸福者です

子供の頃「大人になったら買う」と心に誓った2000GT。あまりの高騰ぶりに一時はあきらめかけましたが、妻の後押しもあって、1台目をなんとか手に入れ、そして運良く今の2台目に巡合えました。これほどうれしいことはありません。2000GTを通じて知り合いもどんどん増え、人生が大きく変わった気がします。



1970年式 トヨタ 2000 GT(MF10)

全長4175mm
全幅1600mm
全高1170mm
ホイールベース2330mm
トレッド前/後1300/1300mm
最低地上高155mm
室内長770mm
室内幅1430mm
室内高950mm
車両重量1145kg
乗車定員2名
最高速度215km/h
0→400m加速15.9秒
登坂能力sinθ0.552
最小回転半径5.0m
エンジン型式3M型
エンジン種類水冷直列6気筒DOHC
総排気量1988cc
ボア×ストローク75.0×75.0mm
圧縮比8.4:1
最高出力150ps/6600rpm
最大トルク18.0㎏-m/5000rpm
トランスミッション型式前進5段後退1段、オールシンクロ
変速比1速3.074/2速1.838/3速1.256/4速1.000/5速/0.866/後退3.168
最終減速比4.375
燃料タンク容量60L
ステアリング形式ラック&ピニオン(15.1)
サスペンション前後ともダブルウイッシュボーン
ブレーキ前後ともディスク
ホイール前後ともマグネシウム(5J)
タイヤ前後とも165HR-15
発売当時価格238.55万円


【1】【2】から続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式 トヨタ 2000 GT(MF10)(全3記事)

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text:Isao Katsumori(Zoo)/勝森勇夫(ズー) photo:Ryota-Raw Shimizu(Foxx Bookes)/ 清水良太郎(フォックス ブックス)

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