「ドアの閉まる音が、私の背中を押してくれた感じです」博士の愛した由緒正しい2000GT|1970年式 トヨタ2000GT(MF10)【2】

センターロックのホイールは、回転方向指定のあるトヨタ純正のマグネシウムホイール。フロントブレーキはジャガーEタイプの部品を使い整備されている。

       
【1】から続く

1台目は後期型の1号車となるATモデル。そして2台目は桶谷博士に愛され、マツダコレクションに収蔵されたことのある由緒正しき1台。一度でも付き合うことができれば幸運な2000GTと、二度も付き合う幸福なオーナーの旧車ライフを紹介しよう。

【1970年式 トヨタ2000GT(MF10)vol.2】

 エンジン音を確認する前に、ドアの開閉音の良さにオーナーはノックダウン。エンジンを始動することなく購入を決めてしまったMTモデルの後期2000GT。

「エンジン音を聞いてくれと頼んでおきながら、エンジンをかけずに決めてしまったんだから、2人ともあっけにとられていました(笑)。ただ、この2000GTを購入した一番の決め手は素性の良さです。

 最初のオーナーが2000GT好きで有名な桶谷繁雄工学博士で、その後、マツダコレクションに収蔵されていたという来歴は、メカに詳しくない私には安心して購入できる何よりの材料。気持ちはすでに九分九厘決まっていて、ドアの閉まる音があまりにもよく、エンジンの音よりも先に、私の背中を押してくれた感じです」と購入時のエピソードを語ってくれた。

 取材時に布引さんが見せてくれた、桶谷博士が愛車を紹介したエッセイからも、整備をおこたらず、大切にされていたことがうかがえた。走行距離が延びたのは、普段の通勤、さらに京都の大学で教鞭をとるために、月1回は東京から京都に通っていたことが主な理由。

「短い距離を頻繁に乗るより、一定の回転数で長距離を走ったクルマの状態はいいと思ったんです」と布引さん。同じ銘木でも、育った環境によって値打ちは大きく変わる。それはクルマも同じ。銘木の目利きは、桶谷博士に愛され、マツダコレクションで保存されていたこの由緒正しきトヨタ2000GTを一目で「買い」と決めていたのだ。

【画像22枚】2000GT好きとして名高い大学教授の桶谷繁雄工学博士が愛したシルバーのMF10。由緒正しい一台


>>子供の頃に強く心をひかれたトヨタ2000GTの流麗なフォルム。オーナーにとって日本のスーパーカーといえばこれ。唯一無二の存在だ。


>>15万kmを突破してもなお快調な3M型直列6気筒DOHCエンジン。オーバーヒート気味になるとぐずるらしく、その点だけは注意している。


>>3連キャブは純正のソレックス40PHH。左フェンダー内にあるエアクリーナーは、いすゞエルフのパーツを使っているそうだ。


1970年式 トヨタ 2000 GT(MF10)

全長4175mm
全幅1600mm
全高1170mm
ホイールベース2330mm
トレッド前/後1300/1300mm
最低地上高155mm
室内長770mm
室内幅1430mm
室内高950mm
車両重量1145kg
乗車定員2名
最高速度215km/h
0→400m加速15.9秒
登坂能力sinθ0.552
最小回転半径5.0m
エンジン型式3M型
エンジン種類水冷直列6気筒DOHC
総排気量1988cc
ボア×ストローク75.0×75.0mm
圧縮比8.4:1
最高出力150ps/6600rpm
最大トルク18.0㎏-m/5000rpm
トランスミッション型式前進5段後退1段、オールシンクロ
変速比1速3.074/2速1.838/3速1.256/4速1.000/5速/0.866/後退3.168
最終減速比4.375
燃料タンク容量60L
ステアリング形式ラック&ピニオン(15.1)
サスペンション前後ともダブルウイッシュボーン
ブレーキ前後ともディスク
ホイール前後ともマグネシウム(5J)
タイヤ前後とも165HR-15
発売当時価格238.55万円


【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2018年10月号 Vol.189
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式 トヨタ 2000 GT(MF10)(全3記事)

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text:Isao Katsumori(Zoo)/勝森勇夫(ズー) photo:Ryota-Raw Shimizu(Foxx Bookes)/ 清水良太郎(フォックス ブックス)

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