三菱製のダッジ「コルトGT」【3】事実上、女性オーナーのワンオーナーカー「マツダの代わりにこのクルマはどう?」|1974年式 三菱 ダッジ コルトGT|ニッポン旧車の楽しみ方 第15回

ハロさん(左)とダッジ・コルトGTを「発見して救った」リースさん(右)。「もうすぐ子供が生まれるので、あまりクルマにお金を使えません」というリースさんは、1973年式 マツダ RX-2のクーペとセダン、1973年式 マツダ RX-3の3台のマツダ車を所有している

       
「コルト」という車名は、日本のクルマ好きにとっては三菱車を表す代表的なもの、という印象のはず。その車名を持つクルマが、実はアメリカの自動車メーカーのブランドで売られていたのをご存じだろうか。1970年代前半に起こったオイルショックのとき、クライスラーの中の1ブランド「ダッジ」の小型車として、コルトGTが販売されていた。そのうちの1台が、価値の分かる人たちによって、良好なコンディションで残されているのだった。

【 ニッポン旧車の楽しみ方 第15回|1974年式 三菱 ダッジ コルトGT Vol.3】

【2】から続く

 売り主の話とクルマに残された記録を合わせながら、ハロさんとリースさんがこのクルマの生い立ちをたどってみると、事実上、女性オーナーのワンオーナーカーだったことが分かった。1994年を最後にそのオーナーによる記録は途切れている。オーナー死去の後はガレージに放り出されていたようだった。クルマの売り主だった人は、遺族がようやく処分することにしたこのクルマを引き取ったものの興味が持てず、登録もしないうちにすぐに転売した。それをリースさんが見つけて維持するあてもないままに引き取ったのである。

 そのころハロさんは自分の叔父の家を訪ねるたびに、近所に止まっていたきれいなマツダ車を見つめていた。
「こんな小さなクルマもいいなあ」
 そう感じたハロさんは、オーナーのリースさんに譲ってくれとしきりに頼み始めた。そんなところにリースさんがオリジナルの日本製ダッジを手に入れてきたというわけだ。

 そもそも自分で維持するつもりのなかったリースさんが、「マツダの代わりにこのクルマはどう?」と持ちかけると、ハロさんは二つ返事で了解。「マツダ熱は一気に冷めました」と、あっけらかんとしたハロさんの反応が面白い。
 登録を済ませて、晴れてこのコルトGTの2人目のオーナーとなったハロさん。クルマの状態はとても良好で、今のところキャブの調整とタイヤの交換以外、特に何もしていないそうだ。


>>【画像14枚】キャビンはGTらしい実に堂々としたもの。極上の状態で残るダブルストライプ入りのシートなど。前後ともシートはもちろんオリジナルだ。オドメーターの表示は5万913マイル


 オーナーが大切にするクルマも、予期もしないさまざまな理由で人手に渡ることがある。愛車を手放すオーナーはその瞬間、クルマがその生まれた姿のままでネクストライフを過ごしてくれることを願うのだ。クルマを造りあげたデザインと技術、そしてそこに秘められた時代背景と思い出を、そのまま次の世代へ伝えていきたい。それは決して1人のオーナーだけでできることではなく、みんなでクルマを保存していく覚悟が必要だといえるだろう。

 まさに「プリザーブ・バイ・コミュニティ(みんなで守っていく)」。この三菱ダッジ・コルトGTも、そうやって未来へ生き残っていくことだろう。




ボンネットの先端には「DODGE」の文字。グリルには赤い「GT」のバッジが誇らしげだ。丸形2灯ヘッドライトを含むグリルのデザインと、ボディのカラーリング&サイドストライプはそのまま日本へ逆輸入され、1975年「ギャラン1600 GT」のモチーフとなって国内販売された。





ホイールカバーは採用されずに、黒塗りとしたホイールのセンターキャップには、ステアリングのホーンボタンと同じ「コルト」(若馬)のデザインが入れられていた。




後部窓も全開する開放感ある2ドアハードトップに、コークボトルラインをリファインしたダイナウエッジラインが「アメ車らしさ」を増幅する。1976年式以降は安全基準の強化によって、後部窓が固定式となった。





テールライトは同年式ギャラン(日本国内仕様)とは異なる独自の形状だった。サイドストライプとマッチした細いストライプがテールを囲み、その右上に「DODGE」の文字がはいるデザインだ。バンパーにはラバー製オーバーライダーがつくが、1974年式はまだそのサイズが小さかった。


ノスタルジックヒーロー 2013年10月号 Vol.159
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ニッポン旧車の楽しみ方 第15回|1974年式 三菱 ダッジ コルトGT(全3記事)

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 【1】【2】から続く

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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