550cc軽トラックのゆかいな仲間たち【5】ゼネラルモーターズ系列ではラスカルの車名で販売されていたスーパーキャリイ|1984年式 スズキ キャリイ 消防車

ST40系の4サイクル車。消防団仕様で奇跡的に生き残っていた未再生消防車。ST40系では後期型にあたる。

       

【550cc軽トラックのゆかいな仲間たち Vol.5】

最近にわかに注目されている550ccの軽トラック。世代的にも本誌にはバッチリなクルマたちだ。気楽に楽しめることはもちろん、海外に広く輸出されているため、それぞれの国で独自の仕様が存在。そんなパーツでも楽しめる、いま一番お勧めのジャンルだ。

【4】から続く

 イギリス仕様に話を戻そう。まず、スズキが自社ブランドで展開しているのがスーパーキャリイだ。排気量に関しては、前述のように550ccではなく、4サイクル水冷直列4気筒SOHC、970cc(ボア65.5mm×ストローク72mm)45 psエンジンを搭載している。だが、基本的にはなじみ深い日本仕様と同じ顔である。フロントバンパーに関しては、仕向地の基準に合わせて大型化されている。

 それに対し、ゼネラルモーターズ(以下GM)系列で販売されていたのがラスカルという愛らしい車名の軽トラたち。まるでチョコレートのような格子模様の樹脂グリルを装着しているのが特徴だ。

 1981年からスズキはGMと提携関係となっているため、イギリスではGME仕様(GMヨーロッパ)、GM傘下であるボクスホール仕様、ボクスホールの商用車ブランドであるベドフォード仕様といった、さまざまな兄弟車がキャリイには存在した。

>>【画像57枚】キャリイ&ミニキャブ、5台の仲間たちが居並ぶショットや、各車のディテールなど

 これらの違いはチョコレートグリルに付くエンブレムで見分けられる。ボクスホールは何も付かない。GMEは中央に小型のエンブレム。ベドフォードは大きく文字が浮き出したタイプが使われる。ベドフォードは文字が一体で成型されているタイプと、文字だけが別体でチョコレートグリルに取り付けるタイプが存在する。おそらくは別体のタイプは後期型で、グリルを他社仕様と共通化したのだろうと推測できる。

 スズキとGM系とでは、同一国向け仕様にもかかわらず、まるで違うクルマかと思うほど、表情が異なる。これが輸出仕様の面白いところだろう。

ゆかいな仲間5:1984年式 スズキ キャリイ 消防車

 イギリス仕様にするうえで苦労させられたのは、やはり部品の調達だったそうだ。飯田さんは「スズキは海外仕様の部品を一切、国内には売ってくれないのですよ。パーツナンバーはあるので、それを端末に打ち込み、パーツが存在しているのは分かっているのですが、国内のディーラーでは買えない。なので海外のディーラーや部品商に問い合わせて輸入したり、イーベイオークションで探しました」という。

 もちろん、どうしても手に入らないものもあり、それは代用品を使用するなど、柔軟な発想で仕上げている。




>> 一方開の荷台はアオリ部分が改造されて常時開口となっている。




>> ベースがスタンダードグレードのため、グリル中央部の造形はプレスで省略されている。




>> 走行はわずか4000kmという極上のコンディション。




>> シートもキレイな状態を保つ。




>> 消防団の行灯と赤色灯。




>> トーハツ製V38CS可搬式消防ポンプ。川や用水路の水を消火活動に使う。




>> 現在でも始動可能。冷却は汲み上げた消火用水で行う水冷式。


OWNER




自動車屋さんを営むオーナーのルーツは、消防ポンプを扱う香取ポンプ。火の見やぐらも製作していた。そのため消防車も手に入れたかったという。


【6】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2015年 11月号 vol.32
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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【1】【2】【3】【4】から続く

text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : TAKASHI AKAMATSU/赤松 孝

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