クロカン4WDからSUVへ変貌
大きく羽ばたいたハチマル4WD車
【
憧憬のハチマルRV 】
メカニズムや技術、多様性など、すべての面においてクルマが飛躍的に進化・進歩した1980年代。それはセダンやスポーティーカーだけでなく、4WD車も同じだった。70年代は、オーバーフェンダーに大きなタイヤが特徴の無骨なヘビーデューティーなクロスカントリー(クロカン)4WDが主流だったが、80年代に入るとオーバーフェンダーがないスッキリとしたデザインや、ロングボディのステーションワゴンスタイルを採用。その傾向は室内も同様で、「道具」としてのクルマから乗用車らしさを取り入れていく。
その代表作となったのが三菱の初代パジェロで、パリ・ダカでのデビューウィンに裏付けられた飛び抜けた4WD性能に加えて、当時としては豪華な内装がおごられるなど、従来のクロカン4WDとは一線を画した内容だった。折しも時代はスキーブームで、ピークを迎える1993年に向けて、年々スキー人口が増加。そのような背景もあり、パジェロは大ヒットを記録した。それに呼応するように、各メーカーから新たな4WD車が次々にデビュー。4WD性能を維持しながら、オンロードの走行性能や乗員の快適性を高めることに開発コンセプトがシフトしていった。
90年代に入ると、さらに高級路線は加速していくが、そのきっかけを作ったのがランドクルーザー80だ。豪華な装備や快適性は、4WD車のクラウンと言えるものだった。
当時はSUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)という言葉は使われていなかったが、クロカン4WD車が快適&豪華な仕様へと変ぼうを遂げる転機となり、現代SUVへ続く道を示したのが80年代だったのだ。
>>【画像10枚】60、80の各トヨタ ランドクルーザーやビークロス、パジェロなど1980年SAFARI
国産クロカン4WD車の草分けであるパトロールの後継車種として1980年にデビューしたサファリ。走破力と耐久性は折り紙付きだ。デビュー時から2ドア・ショートホイールベースと4ドア・ロングホイールベースが用意された。後期は角形ヘッドライトとなる。西部警察で活躍した放水車はこの世代のサファリだ。
1981年 BIGHORN
初代ビッグホーンは「ロデオ ビッグホーン」が正式名称で、1981年にデビュー。ショートバン、ロングバン、ショートソフトトップ(いずれも2ドア)の3つでスタートし、1984年に5ナンバーワゴンを追加。1985年にはロングボディを4ドアに変更した。80年代後半にはイルムシャー仕様やロータス仕様も登場している。
1982年 PAJERO
1982年に登場した初代パジェロ。デビュー時は3ドアのメタルトップとキャンバストップの設定だったが、翌年に5ナンバーモデルや5ドアのロングボディを追加。エンジンやハイルーフ/標準ルーフも含めれば、じつに多彩な仕様を誇った。乗用車感覚あふれるスタイルや室内と安心感の高い走破力で大ヒットした。
1986年 JIMNY
小さなボディからは想像できないほどの走破性を持つジムニーは、1970年に誕生。より乗用車然とした2代目のSJ30ジムニーは1981年にデビューし、1986年に登場したこのJA71ジムニーは、2代目の2期目にあたるモデル。従来の2サイクルからEPI(燃料噴射装置)付きの4サイクルエンジンに変更したのが特徴だ。
1988年ESCUDO
本格的な4WDシステムを持ちながらも、オンロードでの走行性能や快適性も追求し、ライトクロカンという新たなジャンルを開拓した初代エスクード。デビュー時は1.6Lエンジンの3ドアのみだったが、後に2Lと2.5Lエンジンを追加し、5ドアボディも用意された。コンパクトなサイズも奏功し、販売面も好調だった。
1989年LAND CRUISER 80
90年代を目前に大きく生まれ変わったランドクルーザー。これまでの直線基調のクラシカルなデザインから、曲面構成のスタイルとなり、ボディサイズもひと回り大型化。室内もまるで高級乗用車のような仕立てと装備となった。エンジンは新開発の4.2L直列6気筒を搭載。国産4WD車の頂点へと登りつめた。
初出:ハチマルヒーロー 2016年 1月号 vol.33
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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