アートトラック 異空間へいざなう走るラブホテル。ゆき号(1984年9月号)

カーテンを閉め、満室アンドンを点灯……。仕事の要件であっても、そんなときはなかなかオーナーに声をかけられない。

       

↑現在(2023年3月)見ると感じる昭和ムードも、当時は流行の最先端であったことを考えるととても感慨深い。

いつも空室です。どなたでも乗せちゃうよ。

なんともユニークな発想をするものなのか。ボディの飾りはこれといった派手さはなく、いたってオーソドックスな飾りに徹している。それがどうだ! ドアを開け、中をのぞくと、まあなんたることか、これがトラックの内装かと目を疑う。応接間にピッタリするようなシャンデリアが燦然と輝き、助手席にはコンソール台を作り、4チャンネルコンポからカラオケセットまで揃え、まさに動くラブホテルだ。

「このトラックを運転している時間がオレの1日のうちで一番長いわけだから、いくらお金をかけてもいいと思っている。要は、快適に仕事ができるかどうかだからね。いつも鼻唄まじりで心豊かな気分でハンドルを握っているネ」。

運転席は仕事場で最も重要な“場所”といった認識があるからこそここまで凝ったのだ。

フロントのところに「ホテルゆきスグソコ」というアンドンをかかげている。

このトラックのニック、ホテル・ゆきは名前の一字と○○行きをシャレでかけたもの。空室と満室のアンドンもきちんと明かりが点くという。

仮眠室は、スポットライト、ミラーボールが輝き、さらにダイヤ型の鏡張りという繁華街のラブホテルにこんなのがあったんでは、と思わせる出来。

「内張りが15万円くらい。シャンデリアが12万円、それにコンポが20万円だから、内装はかれこれ入れて60万円くらいかけているかな。あとはボディをもっと飾りたい。バンパーもキャデラック型のにして、アンドンもあと2、3個付けたいな」。

独身のオーナーさんだけに、ホントにラブホテル代わりに使っているのではと尋ねると……。

「いえ、あくまでもオレ一人で仮眠をとるだけです」とあわてて否定したが……。

——以上、ベスト5(1984年9月号)での記事では、ワンマン灯の文言から内装を特にフォーカスしているが、現在(2023年3月)に見ても、パーツそれぞれのサイズ感は4Dにマッチして、外装のバランスは見事としか言いようがない。

サイドバンパーをはじめ、シートキャリアにナンバーベース、さらにドア手すりパイプ部に添えられたマーカーの装着は実にさりげないため、おそらく昼夜でイメージがガラリと変わるのではないだろうか。そんなところも「ラブホテル」に例えられたのかも。ナイトシーンが気になる1台だ。

→【画像2枚】そのほかの写真はこちらから。

文:編集部 カミオン1984年9月号をもとに再構成

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