310ターボ 231㎰【2】インジェクション化の意外なメリット|1978年式 日産 サニー 1400 クーペ SGX-E

A14型をベースに、A15型用クランクの採用で1.5L化。ピストンは日産純正品だが、コンロッドはクロモリH断面の社外品を組み込む。カムはオーバーラップを短くする意味でJUNのターボ用68度スペシャルカム、バルブスプリングはまつおかの強化仕様、ガスケットは特注1.2mmメタルφ78mmという構成だ

       
発売から50年以上たった今なお、A型エンジンはその限界を見せてはいない。その証拠に最新のフルコンピューターと熟練職人が作ったパイピングは、A14型をパワフルで、しかも乗りやすいターボチューンドに変ぼうさせてしまった。しかもボディは、レースシーンを思わせるオバフェン付きのクーペ。これを見ずして現代のA型シーンは語れない!

【1978年式 日産 サニー 1400 クーペ SGX-E Vol.2】

【1】から続く

 さて、いよいよ本丸となるターボの話に移るが、まず伝えておかなければいけないのは、A型用のターボキットなんてものは市販化されていないということだ。つまり、タービンはもとより、サクションパイプやサージタンクといった主要パーツをバラでそろえたり、場合によっては製作しなければならないのだ。ところが、今回エンジンを担当した東京の「A(エー)ファクトリー」は、うれしいことに機械加工が専門のショップ。となれば、ワンオフでパイプを曲げることなど造作もないように思えるが、常陸暁雄(ひたち・あけお)代表によると、
「A型エンジンはL型と同じターンフロー。インテークとエキゾーストがフロントから向かって右側に集中するレイアウトとなっています。そのため各種パーツを取り付けるためのスペースが狭いのです。しかし、今回は燃料供給にインジェクションを使ったおかげで、インテーク側にある程度の角度を付け、エキマニ側にスペースを設けることができました。これがキャブだったら油面とのかね合いがあって無理でしたが、インジェクションはその角度を気にしないくてもいいですから」
と、インジェクション化が意外なメリットを生み出したことを明かしてくれた。インジェクションの話が出たところで、こちらについても触れておこう。引き続き常陸さんの話だ。


>>【画像31枚】本来ラジオがある位置をカスタムして、左から油温/油圧、水温のメーターが設置されるパネルなど。2つのメーターの間にあるランプは上が油温を、下が油圧の状態を点滅スピードで知らせる。水温計の下のランプは赤が水温上昇、緑が適温、青が冷えている状態を示す




>> VQ型エンジンで使われている360ccインジェクターが装着されるブロックとフューエルレールもAファクトリーのオリジナルパーツとなる。加工が得意なショップならではの技術力の高さが生かされているのだ。





>> タービン本体は、SR20DET型からの流用となるギャレットA/R80。これに関してAファクトリーの常陸さんは、「壊れても直しやすいですし、アフターでさまざまなパーツが出ているので発展もさせやすい」と、後々のことを考えた選択だったことを明かしてくれた。





>> オイルポンプもAファクトリーの製品を使うが、単に油圧を上げるのではなく、低回転域でのオイル供給を補うべく、容量を1.5倍にしているのが特徴だ。





>> FRPのボンネットとバンパー、そしてスポイラーはリスタードの製品だ。ボンネットピンの位置を見た目重視で決めたため、ボンネットを固定するステーの位置を変える配慮もしている。また、バンパーステーの長さを詰めてスタイリングのバランスも向上させた。フェンダーのウインカーは小ぶりなデザインの110サニー用を裏から止めたもの。普段はリアのマフラーだけを使うが、バルブを開けてサイドからも排気させると、排気効率を一気に上昇させることができる。


1978年式 日産 サニー 1400 クーペ SGX-E(B310)


SPECIFICATION 諸元
■エクステリア:VW純正タングステンシルバーオールペイント、リスタード製FRPボンネット(ボンネットピン位置変更)/FRPバンパー/FRPフロントフェンダー/FRPリアハッチ、ピットロード・FRPフロントスポイラー/FRPオーバーフェンダー、レイブリック製ヘッドライト、グリル一部アミ張り、バンパーブラケット短縮加工、110サニー用フェンダーウインカー裏付け、バイク用カーボンドアミラー
■エンジン:A14型用ブロック、φ76.5mmピストン、H断面クロモリコンロッド、A15型用クランク、JUN製ターボ用スペシャルカム68度、1.2mm特注φ78mmメタルガスケット、まつおか製強化バルブスプリング、ポート段付き修正、ヘッド面研、バルブフェイス修正、燃焼室合わせ、Aファクトリー製オリジナル大容量オイルポンプ/サージタンク/フロントカバー、SR20型用クランク角センサー、オイルパンバッフル加工、強化エンジンマウント、クスコタワーバー/オイルキャッチタンク
■吸排気系:SR20型ターボ用スロットルボディ、Aファクトリー製オリジナルφ60mmフロントパイプ/オリジナルマニホールド、SR20型ターボ用タービン、トラスト・ブローオフバルブ、UKAファクトリー製オリジナルφ50mmマフラー&バルブ開閉式サイドマフラー
■点火系: RB26型用ダイレクトイグニッションコイル
■冷却系:トラスト製AE86用アルミ3層ラジエーター、トラスト製16段オイルクーラー、ハイエース用インタークーラー流用
■燃料系:Aファクトリー製フューエルレール/オリジナルインジェクターアダプター/インジェクターブロック、VQ型エンジン用360ccインジェクター×4、ボッシュ製燃料ポンプK979、サード・レギュレーター
■電気系:リンク製G4ストームECU
■駆動系:ニスモ製強化クラッチ/クラッチカバー、純正フライホイール軽量加工&バランス取り、Aファクトリー製オリジナルクイックシフト
■サスペンション:(F)まつおか製フルタップ車高調キット/強化スタビライザー (R)まつおか製ダウンサス/8段調整ショック
■ブレーキ:(F)ウィルウッド製4ポットキャリパー/φ257mmスリットローター/ステンメッシュホース (R)エンドレス製ブレーキシュー
■タイヤ:ナンカン NS-2R(F)175/50R13 (R)175/60R13
■ホイール:RSワタナベ (F)13×8J -6 (R)13×9J -19
■インテリア:モモ製プロトティーポステアリング、ピボット製タコメーター、ブリッツ製ブースト計、ワンオフ油温計/油圧計/水温計、レノボ製10インチタブレット、PLX製空燃比計、レカロ製バケットシート、サベルト製レーシングハーネス、ニスモ製レッドステッチ本革製シフトブーツ、リアシート撤去、サイトウロールケージ製斜行バー付き4点式ロールケージ



【3】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年11月号 vol.018
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1978年式 日産 サニー 1400 クーペ SGX-E(全4記事)

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【1】から続く

text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO(SAKKAS)/佐藤亮太(サッカス)

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