4歳の時から一緒! 人生のほとんどを共に過ごした「遊び道具」|スバル360コンバーチブル Vol.2

       
1960年式 スバル360コンバーチブル(K111)

 1960年前後といえば、59年に登場したスバル360によって、ようやく一般家庭でも自家用車が持てるようになった時期である。そんな時代に、実用性が低く、価格もセダンに比べて1万円ほど高いオープンモデルを求める人が少なかったであろうことは想像に難くない。



 そんな希少な60年式のスバル360コンバーチブルをおよそ50年に渡って所有しているのが、溝辺徹也さんだ。もちろん、現在54歳の溝辺さんが50年前に購入できたわけではないのだが、話を伺うとユニークな来歴が語られた。

 そもそもこの個体は、お菓子の景品として用意されたもので、関東地方に住んでいた当選者が免許を持っていなかったことから売却。新古車として兵庫に回って来たという。



 先述のように、需要の少ないコンバーチブルは中古市場では安く売られており、自動車販売店を営んでいた溝辺さんの父親が入手したのだ。その後2人のオーナーへ販売、下取りを繰り返し、お店へと戻ってきたのが今から50年前のこと。当時、10年落ちのスバル360にほとんど価値はなく、このコンバーチブルも下取りではなく処分依頼という形で引き取っている。

 そのままスクラップにされる運命だったスバル360を救ったのが、幼少時の徹也さんだった。「これだけは売らないで」と頼み込んだ結果、販売店の片隅にコンバーチブルが残され、それ以来徹也さんの1/1サイズのオモチャとして、ともに過ごしてきたのだという。


コンバーチブルモデルだが、車台番号はセダンと通番となっている。


アクセルペダルは一応オルガン式だが非常に細い。クラッチペダルの下にある丸いボタンはヘッドライトの切り替えスイッチで、一度押す(踏む)ごとにハイビーム/ロービームが切り替わる仕組み。


シフトレバーの前方には左からチョーク、スターター、燃料コックレバーの3つが並んでいる。


リヤシートは簡単に倒れ、荷台になる。四角いカバーの部分は、サービスホールになっている。


スペアタイヤ裏にあるフロントサスペンションのセンターコイルスプリング。初期モデルだけに見られる特徴的な構造だ。


ノスタルジックヒーロー vol.195 2019年10月号掲載(記事中の内容はすべて掲載時のものです)

text : NostalgicHero/編集部 photo : Hirotaka Minai/南井浩孝

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