わずか718台!「ソフトウインドー」を持つレアなナローポルシェ|1967年式 ポルシェ 911 タルガ

この個体は、タルガトップとしては初期のモデル。リアウインドーがビニール製となっていることから「ソフトウインドー」と呼ばれる希少な存在となっている

       
【1967年式 ポルシェ 911 タルガ】

クラシックメルセデスやポルシェの世界では、今や国内屈指の名店として評価を得ている「ヴィンテージ湘南」。そこで出合ったポルシェ911が、クラシックカー愛好家の間では定番的気モデルとして知られるナロー911世代の1台であることは、ポルシェ好きであれば一目見ただけで分かるだろう。

しかしこのシルバーグレーのナロー911は、さらに希少な存在なのである。セミオープンのタルガトップ仕様の中でも、最も初期のモデルでファンの間では「ソフトウインドー」と呼ばれる時期のものなのだ。

車名のみならず、根底のフィロソフィーや技術的スキームまで半世紀以上にわたって守り続けていることから、最も優れたスポーツカーの1つと称されるポルシェ911は、1963年に901の名でデビュー。しかし、2桁目が「0」となる3桁の数字は、フランスのプジョーがすでに商標登録していたため、ポルシェは新たに911と名づけ、翌年から本格的な生産に入った。

【画像7枚】ナローボディのポルシェは、タイプ901シリーズとなる。初期のポルシェ911は、エンジンのピックアップはもちろん軽量ボディのおかげで、その後のシリーズとはひと味違うパフォーマンスを発揮するため、珍重されている。後にポルシェのアイコンとなる空冷ボクサー6エンジン。当時としては数年前に登場したばかりの最新型エンジンだった。2リッター時代のエンジンピックアップのよさは、ナローボディ仕様の評価が高い一因となっている

ところで、ポルシェ911の前任にあたる356シリーズでは、常にオープンモデルが用意されていた。今も昔もポルシェにとって最大市場の北米で、交通当局によりフルオープンモデルに対する規制が強化されようとしていることを察知したポルシェ技術陣は、画期的なアイデアを生み出すことになる。
それは従来のカブリオレでなく、センターに堅固なロールバーを組み入れ、Aピラーとロールバーの間は脱着式トップ。ロールバーより後ろは、ビニール製リアウインドーを持つソフトトップを組み合わせることで、オープンエアの開放感と転覆時の安全を両立させる秀逸なものだった。



このセミオープン版は、当時のポルシェが覇権を誇っていたイタリアの公道レース「タルガフローリオ」から「タルガ(Targa)」と名づけられ、1967年モデルとして1966年9月から911/911S、そして4気筒の912に設定。
デビュー早々から、高い評価を得るに至った。ところが、ソフトトップの耐候性やビニール製リアウインドーの耐久性が、ポルシェの顧客の求めるレベルには達していなかったことから、翌年には熱線入りガラス製のリアウインドーをメーカーオプションとして設定。リアエンドに向かって抜けてゆく心地よいオープンエアを犠牲にしても、やはりこちらの方が快適さや剛性感に優れると判断。
1968年モデル以降は、ガラス製リアウインドーが多数を占めるようになったという。

そして1969年モデルから、すべてのタルガがガラス製のリアウインドーに統一。以降そのスタイルが、964シリーズ(1989~93年)までのまで、911タルガの象徴であり続けていた。
それ故に「ソフトウインドー」のタルガは、激レアな存在。初年度の1967年モデルとして生産されたのは、わずか718台に過ぎないといわれる。
デビュー当時には欠点とされたソフトウインドーの特質も、クラシックカーとなった今では、かえって魅力のポイントとして認知されている。さらに圧倒的な希少性とも相まって、国内、海外を問わず、現在のクラシックカーマーケットにおいては、真のコレクターズアイテムとなっているのだ。



珍しいモデルや人気の仕様など、素性はもちろんコンディションのグッドな個体を多数ストックする、注目のプレミアム輸入車ショップの「ヴィンテージ湘南」。ストックヤードとなっている藤沢店には、トヨタ2000GTやスカイラインGT-Rなどの国産ヴィンテージカーはもちろん、ポルシェやメルセデス・ベンツ価値ある個体を取りそろえている。
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初出:ノスタルジックヒーロー 2020年10月号 Vol.201
      (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


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text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Ryota Sato(Sakkas)/佐藤亮太(サッカス)

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