異例なほど大型なインタークーラー! 4連スロットルで230ps! GTI-R独自設計のSR20DET型搭載|1994年式 日産 パルサー GTI-R【2】

GTI-Rがただのクルマで無いことを主張するアイコンがボンネット。中央の大型エアインテークはインタークーラー冷却用。左右フードルーバーでエンジンルーム内の熱気を逃がす

【1】から続く

「ラリーの日産」と呼ばれていた日産だが、なかなかWRC(世界ラリー選手権)の総合優勝を果たせないでいた。そんな中開発されたのが、完全コンペティションモデルのパルサーであった。

【最強の系譜 4WD+ターボ 1994年式 日産 パルサー GTI-R vol.2】

 心臓はU12ブルーバードなどにも搭載された2L直列4気筒DOHCターボのSR20DET型。だが、GTI-R用は特別で、吸排気系を中心とした主要個所を独自設計。4連スロットルチャンバーを採用するなど、吸排気効率を徹底的に高めている。また、ターボチャージャーも専用で、大型のギャレット製T3タービンにより過給効率をアップ。さらに大型インタークーラーも装着する。これらにより、最高出力230ps、最大トルク29.0kg‐mという強力なパワーを達成。パワーウエイトレシオは5.3kg/psに達した。

 このポテンシャルを余すところなく発揮するために、GTI-Rの駆動方式にはフルタイム4WDシステムのアテーサを採用。これはビスカスカップリング付きセンターデフを持つ4WDシステムで、駆動力を最適な比率で前後輪に配分。これにより、4WDの弱点でもあったアンダーステアを抑え、優れた回頭性やコントローラブルなハンドリング性能を実現した。

 これだけのハイスペックを持って登場したGTI-Rのデビューは91年のサファリラリー。しかし、周囲の期待とは裏腹にトラブルにより5位。その後のラリーでもトラブルに泣かされることになるが、最大の弱点は熱。大型インタークーラーがエンジンルーム内の冷却に支障をきたしていた。WRCでの戦績は、日産ワークス体制でのグループAでは92年のスウェディッシュラリーの総合3位が最高位。結局、GTI-RがWRCに参戦したのは2年間のみで、92年シーズンをもって日産はWRCからの完全撤退を決定した。
【画像17枚】今回の取材車両はGTI-Rでは珍しいオプションのサンルーフを装着。チルト&開閉もスムーズに作動。外側には純正アクセサリーのサンルーフ用バイザーも装着。フロントのボンネットに対しておとなしいリアビューだが、専用デザインの大型ルーフスポイラーが存在感を高めている



>>350mm×295mm×60mmという市販車では異例なほど大型なインタークーラーをエンジン上部にマウント。これがWRCで弱点となった。


パルサー GTI-R(RNN14)主要諸元
全長×全幅×全高(mm) 3975×1690×1400
ホイールベース(mm) 2430
トレッド前/後(mm) 1440/1415
車両重量(kg) 1230
エンジン型式 SR20DET型
エンジン種類 直列4気筒DOHCターボ
総排気量(cc) 1998
ボア×ストローク(mm) 86.0×86.0
圧縮比 8.3:1
最高出力(ps/rpm) 230/6400
最大トルク(kg-m/rpm) 29.0/4800
変速比 1速3.285/2速1.850/3速1.272/4速0.954/5速0.740/後退3.266
最終減速比 4.125
ステアリング ラック&ピニオン
サスペンション ストラット(前後とも)
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ 195/55R14(前後とも)
発売当時価格 234.1万円

【3】へ続く

1994年式 日産 パルサー GTI-R(全3記事)
初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41

(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT:Rino Creative/リノクリエイティブ PHOTO:SATOSHI KAMIMURA/神村聖

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