最高速200km/h、車重845キロ! ベースモデルの2倍以上のパワーはアバルト由来|1991年式 フィアット ウーノ 1.4ターボi.e.【1】

後期型の外観は上級の「ティーポ」と同じI.DE.Aの手でフェイスリフトが施された

       
【ハチマルユーロー FIAT Uno 1.4 Turbo i.e. vol.1】

フィアット・グループ総力体制で開発されたホットハッチ

 1983年にデビューしたコンパクト・ハッチバック「ウーノ」は、当時のフィアット基幹モデル。84年には欧州カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、識者から高い評価を得ただけでなく、セールス面でもメガヒットを収めた傑作である。そんなウーノに86年から追加されたスポーツモデルが「ウーノ・ターボi.e.」だった。

 ターボi.e.のパワーユニットは、ウーノ最上級モデルの「70S」に搭載された4気筒SOHC1301ccの「FIRE(ファイア)」エンジンにIHI(石川島播磨重工業)製ターボチャージャーを装着。最高出力105ps/最大トルク15.0kg‐mを獲得し、車重845㎏という小さな車体に、0~100km/h加速8.3秒、最高速200km/hという素晴らしい走行性能をもたらすことになった。

 ウーノのベーシック版「45」の2倍以上に及ぶこの強大なパワーに備えて、サスペンションは大幅にローダウンされるなどの徹底的なチューンナップが施されたほか、ブレーキもリアドラムから4輪ディスクに昇格した。

 一方、外観では前後にスポイラーが装着されたほか、専用の超扁平タイヤ用アロイホイールを装備。インテリアでも専用の革巻きステアリングホイールやスポーツシートが奢られた。

 これらのチューニングを主導したのは、70年代からフィアット・グループ各ブランドのスポーツ部門でエンジニアリングを担当していたアバルト技術陣だった。

 当時のフィアット・グループが、アバルトの主導のもと展開していた若手ラリースト発掘・支援シリーズ「トロフェオ選手権」では、85年以来フィアット・ウーノ70Sが専用車として供用されることになっていたが、ターボi.e.ではそのシャシーチューンのノウハウを引用している。長らくアバルトが社内の開発コードとして使用してきた「SEナンバー」こそ明示されていないものの、ウーノ・ターボi.e.もまた、立派な「アバルト」として生を受けたのだ。

 さらにウーノ・ターボi.e.の開発ドライバーには、この時代「スクーデリア・フェラーリ」F1パイロットだった故ミケーレ・アルボレートが参画していたことも有名なエピソード。つまりは当時のフィアット・グループ総力体制で開発された、極めて意欲的なホットハッチだったのである。

 89年には、ウーノ・シリーズ全モデルが新興デザインスタジオ「I.DE.A」の手による大規模なマイナーチェンジを受け、「セコンダセリエ(日本ではフェイズ2)」と呼ばれる後期型に進化。ターボi.e.も同様のフェイスリフトを受けるとともに、排気量を1372ccに拡大。その結果、最高出力は115ps、最大トルクは16.8kg‐mとそれぞれスープアップを図ることになった。

【画像17枚】前期型ウーノはジウジアーロ式の簡潔かつアイデア一杯なインパネだったが、今回取材した後期型ではデザインは大人しくとも格段に豪華なものとなっている。パワーユニットは、総排気量1372㏄の直列4気筒SOHCエンジンに、IHI(石川島播磨重工業)製ターボチャージャーを装着。115psを発生し、車両重量845kgの車体には充分以上のもの。現代のアバルト500に勝るとも劣らないパフォーマンスの源と言えよう



>>ジウジアーロの傑作たるウーノだが、後期型の外観は上級の「ティーポ」と同じI.DE.Aの手でフェイスリフトが施された。



>>アロイホイールはノンオリジナルだが、ハチマル時代の定番だった伊スパルコ社製を選択。



>>純正マフラーは錆びてしまったため、ワンオフ品に換装。なかなかの快音を発する。


1991年式 フィアット ウーノ 1.4ターボi.e. 

全長×全幅×全高(mm) 3690×1560×1410
ホイールベース(mm) 2360
トレッド(mm) 1350/1305(前/後)
車両重量(kg) 920
エンジン型式 146A8型
エンジン種類 水冷直列4気筒SOHCターボ
総排気量(cc) 1372
内径×行程(mm) 80.5×63.9
圧縮比 8.0:1
最高出力(ps/rpm) 115/6000
最大トルク(kg-m/rpm) 16.8/3500
サスペンション 前ストラット式/後トレーリングアーム式
ブレーキ 前Vディスク/後ディスク
タイヤサイズ 前後とも175/60R13
新車時価格 248万円


【2】へ続く

初出:ハチマルヒーロー 2017年3月号 Vol.40
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1991年式 フィアット ウーノ 1.4ターボi.e.(全2記事)

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TEXT : HIROMI TAKEDA / 武田公実 PHOTO : MASAMI SATO / 佐藤正巳

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