アバルト500より265kg軽い！　F1パイロット「ミケーレ・アルボレート」が開発ドライバーを担当したホットハッチ｜1991年式 フィアット ウーノ 1.4ターボi.e.【2】

【1】から続く

1983年にデビューしたコンパクト・ハッチバック「ウーノ」は、識者から高い評価を得ただけでなく、セールス面でもメガヒットを収めた傑作である。今回の取材車両である「ウーノ・ターボi.e.」は、最も優れた技術陣が担当しただけでなく、F1パイロットだった故ミケーレ・アルボレートが開発ドライバーとして担当する、グループ総力体制で開発されたモデルなのだ。

【ハチマルユーロー　FIAT Uno 1.4 Turbo i.e. vol.2】

80年代の指向性が体現されたターボらしいフィーリング

　今回の取材のため欧州旧車専門ショップ「ガッティーナ」の代表が用意してくれたウーノ・ターボi.e.は、91年式の1.4L版。排気量は筆者の所有する現代の「アバルト500」とほぼ互角ながら、スペック上のパワー/トルクでは格段に劣る。ところが実際に走らせてみると、少なくとも体感的な加速感では現行アバルト500を若干ながら上回るかに思われる。

　低回転域でこそ大人しいものの、ターボ過給が立ち上がった直後からトルクが「ムムムーッ」と立ち上がり、あっという間にスピードを乗せてゆくというハチマル時代のターボらしいセッティングは、乗るものにとっても懐かしくて心地よいものである。

　とはいえスペックシートを見れば、速く感じる理由も納得できよう。ウーノ・ターボとアバルト500の間に開いた車両重量差は、実に265kg。パワー/ウエイト・レシオでは、圧倒的にウーノ・ターボに軍配が上がるのだ。

　そしてこの軽さは「ボーイズレーサー」というカテゴライズにふさしいハンドリングにもプラスに作用しているようだ。構造材の薄さを感じさせるボディながら、サスペンションのセッティングの妙か、ストローク感は十分。やや深めのロールを伴いつつも、すべてのコーナーをヒラリヒラリと気持ちよく曲がってくれる。ノンパワーのステアリングも、車体がちょっとでも動き出せば、重さなど微塵も感じない。

　このクルマが日本国内で新車販売されていた時代、総代理店のチェッカーモータースが雑誌などの広告でうたっていたCMコピーは「ハンパじゃねえぜ！」。

　たしかに、四半世紀を経た現在の眼で見るとセンスはご愛嬌と言うべきだろうが、少なくとも内容に偽りがなかったことが分かったのだ。

【画像17枚】車体はコンパクトでありながらも、ハッチを開くと荷物置き場は充分なスペースが広がる。室内のシートは、デザイン性はもちろん、ホールド/快適性とも極めて秀逸。ドアミラーは左右とも手動式ながら室内から調整可能



>>前期型ウーノはジウジアーロ式の簡潔かつアイデア一杯なインパネだったが、この後期型ではデザインは大人しくとも格段に豪華なものとなっている。



>>総排気量1372ccの直列4気筒SOHCエンジンに、IHI（石川島播磨重工業）製ターボチャージャーを装着。115psを発生するパワーユニットは、車両重量845kgの車体には充分以上のもの。現代のアバルト500に勝るとも劣らないパフォーマンスの源と言えよう。


SHOP INFORMATION

GATTINA（ガッティーナ）
神奈川県藤沢市辻同太平台2-1-1　フジビュー太平台1F
☎0466-33-1122
FAX 0466-33-0101
営業時間 11:00~18:00
定休日 水曜・木曜・イベント日




1991年式　フィアット ウーノ 1.4ターボi.e. 

全長×全幅×全高（mm）　3690×1560×1410
ホイールベース（mm）　2360
トレッド（mm）　1350/1305（前/後）
車両重量（kg）　920
エンジン型式　146A8型
エンジン種類　水冷直列4気筒SOHCターボ
総排気量（cc）　1372
内径×行程（mm）　80.5×63.9
圧縮比　8.0：1
最高出力（ps/rpm）　115/6000
最大トルク（kg-m/rpm）　16.8/3500
サスペンション　前ストラット式/後トレーリングアーム式
ブレーキ 前Vディスク/後ディスク
タイヤサイズ　前後とも175/60R13
新車時価格　248万円


【1】から続く

初出：ハチマルヒーロー 2017年3月号 Vol.40
（記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです）

1991年式 フィアット ウーノ 1.4ターボi.e.（全2記事）

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