ミッドシップの世界初の市販車は、ランボルギーニでもロータスでもないのだ|1967年式 マトラ・ジェット6【1】

とても可愛らしい表情のマスク。補助灯はルネ・ボネ時代からスタンダードで装備されていた

       

レース由来のテクノロジーである、ミッドシップレイアウトを市販車に初めて採用したのは、ランボルギーニでもロータスでもなく
今やその名を知る者も少なくなったフランスの小規模メーカー、「ルネ・ボネ」とその意思を継いだ「マトラ」であった。

【輸入車的懐古勇士 1967年式 マトラ・ジェット6 vol.1】

第二次大戦の勃発前夜、フランスの若きエンジニア、シャルル・ドゥーチュ(D)とルネ・ボネ(B)が興した「DB」。戦後はパナール・ディナ用フラット2気筒エンジンを搭載する空力的な軽量レーシングスポーツで成功を収めるが、1950年代後半を迎えて、空中分解を余儀なくされることになる。パナール製ユニットを使用した前輪駆動にこだわるドゥーチュに対して、ルノーの協力を取り付け、よりパワフルな後輪駆動へと移行を図ろうとしたボネとの関係が大きくこじれ、再生不可能となってしまったのだ。

新たな道を歩むことになったルネ・ボネが、自らの理想を追求して製作したのが、世界初の市販ミッドシップ車として永遠に語られることになった「ルネ・ボネ・ジェット(Djet)」。その基本構成は、DB伝統の鋼管で組んだバックボーンフレームのミッドに、本来はRRであるルノー8系4気筒エンジンを前後逆に搭載する。

個性的なクーペボディは、DB時代の後半から採用されていたFRP製。ボネが戦前以来最大の武器としてきた空力テクノロジーを最大限に駆使し、一説にはCd・値0.25とも言われる、現代の常識においても驚異的な空力ボディに仕立て上げられた。

【画像15枚】今やその名を知るものも少なくなったフランスの小規模メーカー「ルネ・ボネ」とその意志を継いだ「マトラ」。シート背後のエンジンには、高価なスモールGTとしてのキャラクターもアピールすべく、カーペット敷きのカバーが設けられる



>>世界で初めて市販化された、ミッドシップレイアウトのスポーツカー


>>テールはルネ・ボネ時代から大幅に延長され、よりスリークな印象を増している。テールランプは、ランチア・ストラトスにも流用されたことでも有名なフィアット850用と思われる。


>>フロントフード下はスペアタイアにスペースを奪われ、荷物はまったく置けないだろう。●


1967年式 マトラ・ジェット6

全長×全幅×全高(mm) 4220×1500×1200
ホイールベース(mm) 2400
トレッド前/後(mm) 1250/1260
車両重量(kg) 720
最低地上高(mm) 175
エンジン種類 水冷直列4気筒OHV
総排気量(cc) 1255
最高出力(ps/rpm) 105/6800
最大トルク(kg-m/rpm) 11.9/5000
圧縮比 10.5:1
トランスミッション 4MT
サスペンション 前後とも独立ダブルウイッシュボーン・コイル



【2】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 マトラ・ジェット6(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Masami Ssto/佐藤正已

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