ミケロッティが製作したコンセプトカーがなぜ日本に生息しているのか|1971年式 ミケロッティ・レーザー【2】

第11回ノスタルジック2デイズ2019に特別展示された 2台のストゥディオ・ミケロッティ製コンセプトカー。 中でも、2シータースポーツカーの「レーザー」は、 日本国内で数奇な運命をたどった1台であった。


第11回ノスタルジック2デイズ2019に特別展示された2台のストゥディオ・ミケロッティ製コンセプトカー。中でも、2シータースポーツカーの「レーザー」は、日本国内で数奇な運命をたどった1台であった。

【内田盾男さんデザインで製作された1台きりのデザインスタディ 1971年式 ミケロッティ・レーザー vol.2】

そのボディの基本ラインは、70年代初頭のミッドシップ・ベルリネッタの世界において新しいトレンドになりつつあったウエッジシェイプ。一見したところでは巨大なガルウイング・ドアが目を引くていどで、さしたる新しさはないように思われる。

しかし、内田さんとミケロッティがこのクルマで提案したかったのは、当時のミッドシップ車では不可避的な問題となりつつあったエンジンおよびキャビンの冷却を効率的に行うためのアプローチであった……、とも言われている。

巨大な左右サイドシル内に、フロントグリルやヘッドライト内側から取り入れたフレッシュエアを通すためのチューブが配されているのは、そのあかしとも言えるだろう。そして、この時期のミケロッティが手掛けた多くのコンセプトカーと同様にガルウイングタイプのドアを備えているのは、もちろん視覚的インパクトを与える目的が大きかったに違いない。

しかし同時に、この幅・天地ともに大きなサイドシルと低い全高、そして乗降性を両立させる方策だったとも考えられる。

それでは、ミケロッティが一品製作したコンセプトカーがなぜ日本国内に生息しているのか? その事情の完全解明は、現在となっては極めて困難なのだが、ここから推論を交えてご説明させていただくことにしよう。

レーザーが日本の地を踏むことになった最大の理由は、ミザールと同じ。77年7月15〜29日に、東京の晴海見本市会場にて開催された、「ラ・カロッツェリア・イタリアーナ77」という展示イベントに参加するためであった。

ピニンファリーナ、ベルトーネ、イタルデザイン、そしてザガートなどの有名カロッツェリアが、それぞれの作品を合計20台以上も持ち寄って行われたこのイベントで、ミケロッティ・ブースの目玉となったのが、このレーザーとミザールだったのだ。

その後、ミケロッティ社は日本の某大手企業との合弁事業で「ミケロッティ・ジャパン」社を設立。アロイホイールなどの自動車用パーツから、サングラスやアパレルなどの新事業にも進出していたのだが、レーザーはその事業のプロモーション活動にも供されたようだ。

そして、80年前後のある時期に、かの「松田コレクション」が購入。同社が静岡・御殿場で83年にオープンした「スポーツカー博物館」に、ミザールとともに展示され、ひと頃は同館のシンボル的存在として取り上げられたこともあった。

【画像15枚】紆余曲折が重なって、日本に現存していた幻のミケロッティ・コンセプト。その薄さが強調されるリアビュー。ディテールの近未来的なデザイン処理もまた、コンセプトカー的と言えるだろう。その一方でV型4気筒エンジンを始動させると、左右二本出しのマフラーからは、野太くて長閑なサウンドが聞こえるのは、ご愛きょうでもある


>>リトラクタブル式ライトのふたに取り付けられた「まつ毛」は、内側のエアインテークにつながるデザイン。


>>V型4気筒エンジンの熱気を逃がすためのエアアウトレットは、ミッドシップであることをさらに強調する。


>>現在では車検取得のため「ハヤシストリート」ホイールを装着するが、オリジナルはまったく異なる意匠。




1971年式 ミケロッティ・レーザー


●全長×全幅×全高(mm) 4220×未公表×1080
●ホイールベース(mm) 2560
●トレッド前/後(mm) 未公表
●車両重量(㎏) 未公表
●ボア&ストローク(mm) 90.0×66.8
●エンジン種類 60度V型4気筒OHV
●総排気量(cc) 1699
●最高出力(ps/rpm) 78/5000
●最大トルク(kg-m/rpm) 13.46/2800
●最高速(km/h) 未公表
●トランスミッション 4MT


【3】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 ミケロッティ・レーザー(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Isao Yatsui/谷井 功

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