内田盾男さんデザインで製作された1台きりのデザインスタディ|1971年式 ミケロッティ・レーザー【1】

現状では、電動ガルウイング式ドアはここまでしか開かず、乗降性はかなりシビア。またバッテリーが上がってしまったら、ドアも開かなくなってしまう割り切りは、実用性など考慮する必要のないコンセプトカーならではのものだろう。

       
第11回ノスタルジック2デイズ2019に特別展示された2台のストゥディオ・ミケロッティ製コンセプトカー。中でも、2シータースポーツカーの「レーザー」は、日本国内で数奇な運命をたどった1台であった。

【内田盾男さんデザインで製作された1台きりのデザインスタディ 1971年式 ミケロッティ・レーザー vol.1】

2019年2月23〜24日にパシフィコ横浜において開催された「ノスタルジック2デイズ2019」の特別展示として、イタリアの名門カロッツェリア「ミケロッティ」が、プレゼンテーションの目的で製作した二台のデザインコンセプトカー「ミケロッティ・マトラ・レーザー(1971年発表)」と「ミケロッティ・ランチア・ミザール(74年発表)」が大々的にレビュー。

95年ごろまで静岡県御殿場市に存在した「松田コレクション:スポーツカー博物館」に展示されていた姉妹が、実に四半世紀ぶりの対面を果たしたことから、国内外のファンに大きな話題を提供することになった。

今回はレーザーがたどってきた数奇なストーリーをお話しさせていただこう。

まずは、おそらくほとんどの読者諸兄にとって未知の存在であると思われる、ミケロッティ・マトラ・レーザーというモデルの解説から入りたい。レーザーは、かつて北イタリアのトリノを本拠に活動していたカロッツェリア「ストゥディオ・ミケロッティ」が、71年に1台のみ製作したデザインスタディ(習作)。

当時、仏マトラ社が量産していたミッドシップ2+2スポーツカー「M530」のコンポーネンツを流用して、ミケロッティ社所属の日本人デザイナー、のちに同社のチーフデザイナーとなる内田盾男さんがデザインした、完全オリジナルのボディを架装したものである。

このクルマは、同年のジュネーブ・ショーにて、同社のデザイン力と開発技術力を内外にアピールするコンセプトカーとして発表されたのち、外観に若干のモディファイを加えた上で、翌72年の「モントリオール・オートサロン」にも出品。

また70年代前半には、イタリア国内外のコンクール・デレガンスにもたびたび出品されていたという記録も残されている。

【画像15枚】ミケロッティ社所属の日本人デザイナーである内田盾男さんデザインの世界に1台しかないクルマ。そのフォルムとディテールを紹介



>>第11回ノスタルジック2デイズ2019に特別展示された2台のストゥディオ・ミケロッティ製コンセプトカー。中でも、2シータースポーツカーの「レーザー」は、日本国内で数奇な運命をたどった1台であった。


>>1970年代のミッドシップ・スポーツカーらしく、極端なウエッジシェイプとされたプロフィール。サイドシルが、全高の約半分を占めるほどに高いことがよく分かる。


>>薄さが強調されるリアビュー。ディテールの近未来的なデザイン処理もまた、コンセプトカー的と言えるだろう。その一方でV型4気筒エンジンを始動させると、左右二本出しのマフラーからは、野太くて長閑なサウンドが聞こえるのは、ご愛きょうでもある。



1971年式 ミケロッティ・レーザー


●全長×全幅×全高(mm) 4220×未公表×1080
●ホイールベース(mm) 2560
●トレッド前/後(mm) 未公表
●車両重量(㎏) 未公表
●ボア&ストローク(mm) 90.0×66.8
●エンジン種類 60度V型4気筒OHV
●総排気量(cc) 1699
●最高出力(ps/rpm) 78/5000
●最大トルク(kg-m/rpm) 13.46/2800
●最高速(km/h) 未公表
●トランスミッション 4MT


【2】へ続く


初出:ノスタルジックヒーロー2019年6月号 Vol.193
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 ミケロッティ・レーザー(全3記事)

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text: Hiromi Takeda/武田公実 photo: Isao Yatsui/谷井 功

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