S30フェアレディZの時代、スカイラインスポーツと同じカロッツェリアのコンセプトカー｜1974年式ミケロッティ・ミザール【1】

スーパーカーブームに沸く1970年代、すでに50歳代という熟年の域に達していたジョバンニ・ミケロッティが仕立て上げたサルーンカー。恒星ミザールの名を冠するこのクルマは、故郷イタリアを離れ日本の地で永く眠りについていた。

【1974年式ミケロッティ・ミザール vol.1】

　ここに紹介するミケロッティ・ミザールは1974年、イタリアのトリノモーターショーに姿を現したショーカーそのものである。ミザールとは、星座のおおぐま座に含まれる恒星の一つであり、北斗七星の柄の先端から2番目の星の名前だ。この星はよく観察すると2つの星がつながって見え連星と呼ばれる。ミザールの名を冠した作品に、デザイナーであるジョバンニ・ミケロッティはどのようなメッセージを込めたのだろう。

　印象的なのは4座のサルーンでありながら、4枚のドアすべてがガルウイングという異色のスタイリング。70年代でガルウイングといえば、やはり1971年のジュネーブモーターショーで鮮烈なデビューを飾り、日本のスーパーカー少年たちに強烈な記憶を刻みつけたマルチェロ・ガンディーニの手によるランボルギーニ・カウンタックが頭に浮かぶ。それゆえに、ガルウイングといえばスーパーカーというイメージの方も多いことだろう。

　ミケロッティもカウンタックと同年の1971年にレーザーというガルウイングのスーパーカーを発表している。ガルウイングの意味を正しく解釈するなら、50年代のメルセデスベンツ300SLこそが本来のガルウイング形だが、レーザーとミザールはともにこのいにしえのガルウイングドアのスタイルを踏襲している。カモメが翼を広げた優雅な姿を、スポーツモデルではレーザーで、サルーンではミザールで表現したというわけだ。2羽のかもめが連なる様を、ミザールという名の連星に見立てたのかもしれない。

【画像35枚】恒星ミザールの名を冠するこの一台に、ミケロッティは果たしてどんなメッセージを込めたのだろうか

　国産旧車愛好家の読者が多い本誌では、ミケロッティというと1960年式プリンススカイラインスポーツや日野コンテッサ（1962年式コンテッサ900スプリント、1964年式コンテッサ1300）がまずは頭に浮かぶという方が多いのではないだろうか。

　ジョバンニ・ミケロッティの薫陶を受けた有名な日本人デザイナーとして内田盾男さんを思い浮かべる人も多いだろう。高校生時代からイタリア車のデザインの魅力に取りつかれ、日野自動車がイタリアのカロッツェリアにデザインを依頼することが決まった際には、日野の重役だった父親にミケロッティを推したというほどのイタリア通であった。

　日野コンテッサの発表で来日したジョバンニ・ミケロッティと交流を深め、大学在学中にミケロッティに招かれイタリアへと渡り、デザイナーとしての技術を磨いた。そして1970年には若くしてカロッツェリア・ミケロッティのチーフデザイナーとなっている。

　このあたりのいきさつは内田盾男さん自身の著書である「ラ・ミア・マッキナ」（二玄社刊）に詳しく書かれているので、興味のある方はぜひ読んでほしい。この文章を書くうえでも参考にさせていただいた。




>>同年代に日本ではS30フェアレディZが販売されていたことを考えると、いかに先進的か分かる。流線型からクサビ型へとデザインの流行が変化していく、1970年代という時代を感じられる。ボディ下側が黒塗装のためか、見かたによっては車体がスマートに感じられる。


1974年式 ミケロッティ・ミザール

全長×全幅×全高 不明
ホイールベース 不明
トレッド前／後 不明
車両重量 不明
ボア＆ストローク 84.0×79.2mm
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量1756cc
最高出力 110/6000ps/rpm
最大トルク 14.7/3000㎏-m/rpm
最高速 175㎞/h
トランスミッション 5MT

※エンジンはランチア・ベータ1.8クーペを参照。


【2】に続く


初出：ノスタルジックヒーロー 2019年2月号 vol.192
（記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです）


1974年式 ミケロッティ・ミザール（全3記事）


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